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Re: *叶恋華* +実話+ 138話更新! ( No.522 )
日時: 2011/05/12 21:42
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 73kQpkiy)
参照: 期 待 さ せ な い で  。

第百三十九話『天然日和』


次の日——。


「——はい、じゃあ水城」


英語の授業の時間。
私は先生に当てられ、その場で硬直していた。


「……え、えぇ……っと」


こんな問題、答えられるか。
心の中でそう叫びながらも、私は黙って黒板を見つめていた。
光葉中学校は学力が低い学校らしいが、何故か英語だけどこの学校よりも学力が高い……らしい。
ただでさえ英語が苦手な私。
英語の成績、1なのに当てるなんて。
しかも英語の授業は、答えられなくても起立、間違っても起立。


これは新手の嫌がらせか、そうなのか。


「水城ー」
「あ、あぁ、はい……」


先生は私の顔を見て、周りに沈黙が走る。
この空気、なんなの。
先生は私が何か答えるまで、逃がしてくれるつもりはない……みたいだ。


とりあえず、ここは得意のI am攻撃!!

「えーと、I a「はい、起立」
「……」


まだ答えてないですよ、先生。
私は数秒フリーズした後、ゆっくりと立ち上がった。
隣に居る龍、健吾に疾風辺りから小さな笑い声が聞こえてくる。
……あぁ、恥ずかしいったらありゃしない。


「じゃあ、珠紀壱ー」


先生は私をスルーした後、左隣の壱を当てた。
壱は無言で席を立つ。
すると先生が呆れた顔になり、チョークで壱を差した。


「こういう基礎がわからないならなぁ、就職とおなじだ。ニートになるぞ」
「……」


ニート……。
じゃあ私もニートまっしぐらですね。
ていうかこの英語の問題、基礎もくそもないよ。
就職見つけられない人、続出しちゃうぜ。


「な、珠紀ぃ〜?」
「え、は……〜〜」


先生が厭味ったらしく壱を見ると、壱は何やら言いたげに口を動かした。
先生は眉を顰める。


「ん?」
「や、……モゴモゴ」
「ん!?」
「……すいまっせん」


先生の迫力に負けたのか、壱は素直に謝った。
モゴモゴの内容が気になるけれども、まぁいいか。
授業はどんどん進められ、私はその場に立ったまま黒板を見つめていた。


「——じゃあ、立ってる人でわかる人」


授業が進み、立ってる人が多くなった頃。
先生はそう言い出して、立ってる人を順番に見た。
すると、


「はいっ」


珍しく、壱が手を上げた。
しかしその瞬間、一気に周りは静かになり、先生までもが無表情で壱を見つめていた。


「……え」
「——……珠紀壱、どうぞ」
「えーと、I like the……えーと……」
「はいだめ」
「けっ」


壱が戸惑いながら答えると、あっさり先生に却下された。
それと同時に壱が拗ね始め、次第に周りから笑い声が聞こえてくる。
結局その問題は違う子が答えてしまうし、その答えは壱の答えと全く違ったので更に笑われた。


「——じゃあ、もう一回立ってる人でわかる人〜」
「はいっ」


違う問題を質問し、またもや壱が手を上げた。
当てられた壱は、また少しずつ戸惑いながらもこう答え始める。


「えーと……、そめ? ぷろあくてぃす」
「ぶっ!!」


壱の発言に、周りで数人が吹き出した。
ちなみに『そめ』ではなく、『さむ』だ。
英語で『Some』だから、まぁ『そめ』とは読めるけど……。
そして『ぷろあくてぃす』は『ぴくちゃー』……、『Picture』だ。


「どっからぷろあくてぃす出たのよ」
「壱うける〜〜」
「はい、珠紀だめ」


先生のツッコミと、周りの笑い声。
壱はまた答えるのを失敗し、


「あーあぁ、俺惨敗ばっか」


拗ねた子供の様に呟いて、地団駄を踏んでいた。





——その仕草が少しだけ可愛く思えたのは、内緒って事で。







**


「——明日は制服登校で集会があるんだから、ちゃんとした態度でいけよ!!」


帰りの会で、福野が強めの口調で言った。
あぁ、明日制服登校か……めんどくさ。
私はそう思いながら、バッグを枕にして伸びていた。


「名札忘れの子とかいるみたいだけど……、——珠紀壱」
「っ!!」


名指しで呼ばれた瞬間、伸びていた壱が飛び起きた。
私の学校の制服——、セーラーと学ランの左胸に、自分の名前が書かれた名札をしなければならない。
しかし壱は、いつも名札を忘れて学校に来る。


「……え、あれどっか吹っ飛んじゃったんだけど」
「吹っ飛ぶとかありえないし」


隣の乙葉は、壱に鋭いツッコミを入れた。
私も気軽に壱に話しかけれればなぁ……なんて。


「男子の髪型、ワックスとか控えめにしろよ。明日ワックスつけてきたら、洗い流すぞ」
「……え、また俺?」
「そうだよ」


二度目の指摘。
壱はいつもワックスをつけてきている。
壱がワックスをつけていない姿なんて、見たことがない。
つけてきてない壱、どんな感じになるんだろうか——?
きっと元の顔が整っているから、ワックスつけなくても大丈夫だとは思うんだけど——。
うん、でも想像できない。


「……や、これ違うんです、って」


壱はカタコトになりながら、否定する。
福野は「何が違うんだよっ!」とツッコミを入れ、クラスはまた笑いに包まれた。