コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ 138話更新! ( No.524 )
- 日時: 2011/05/12 22:05
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 73kQpkiy)
- 参照: 期 待 さ せ な い で 。
第百四十一話『速まる鼓動』
*美術室*
技術室、理科室、そして美術室——。
今日は移動教室ばっかりだな、と思う。
私は美術室に入って、体を捻って席順を見た。
……あ、そういえば壱と隣だったっけ……。
そう思いながら自分の席はどこかと探していると、
「!」
壱と、目が合った。
見れば、壱は龍の広い膝の上に乗っかっている。
な、なんか可愛い……。
そう思いながら、自分の席にゆっくりと近づいた。
「……」
「キャー、アキャー!! キャッキャッーアーッ」
い、壱が近い……。
そして、龍の奇声も近い。
私がこっちに来た瞬間奇声を上げるもんだから、少しだけ驚いた。
……龍って、こんなに奇声上げるキャラだっけ?
「俺、戻りたいんだって〜」
龍に捕まられてた壱が、そう言った。
龍は奇声を上げながらしぶしぶ壱を放す。
壱は素早く自分の席に戻っていった。
「……」
私の隣の席。
近いけれど、遠い距離。
私は横目で壱をチラ見して、作業をする為の道具を取りに行った。
**
「黒板消し汚い……」
放課後。
掃除当番だった私は、黒板消しを見た後にそう呟いた。
これは黒板消しクリーナーが必要だ、うん。
「……」
ちょうど通ろうとした道には、原田くんと壱が居た。
二人の間を通るわけにもいかないし……。
なんか気まずいから、遠回りをするか。
私は黒板消しを持って、原田くんの背中を横切って遠回りをした。
「…………」
黒板消しクリーナーの音が響く最中、壱と原田くんと私の間は無言であった。
この近い空間って、なんか気まずいし。
原田くんと壱、さっきまで話してたのに……。
そう思いながらクリーナーの電源を止め、今度は壱の後ろから黒板の方へ戻ろうとした。
その際に、少しだけチラ見をしてみたら——……、
「っ!!」
壱がこっちを見ていて、軽く目が合った。
偶然かもしれない。
そうかもしれないけど——……。
まさか、こっちを向いていたなんて思ってもいなかった。
「……っ」
心臓の音が、うるさい。
私はその音を紛らわすかのように、素早く黒板を綺麗にした。