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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.533 )
- 日時: 2011/05/15 20:31
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: TV9sr51/)
第百四十五話『想いの華』
*給食時間*
今日の給食当番は、叶汰の班だった。
私は叶汰が盛っている野菜の所に並び、お皿を叶汰に渡す。
叶汰は顔を上げ、私の顔をチラ見した後に雑に盛り付け始めた。
野菜落ちそうですよ、叶汰さん。
「……」
叶汰が野菜を盛り付け終わったので、私は手を伸ばした。
普通に渡してくれると思ったから。
叶汰は野菜を持つ皿を動かす。
しかし——……。
「えっ?」
私には渡さないで、横にずらされた。
私は驚きの声を上げ、叶汰を見る。
叶汰は無邪気な笑みを浮かべていた。
「面白い」
叶汰の一言で、一瞬怜緒の事を思い出した。
——『面白い』。
隣の席になった時、怜緒が私に言ってくれた言葉。
「……っぁ、」
再び手を伸ばしたとき、また横にずらされた。
私は冷ややかな目線で叶汰を見る。
「いや、もう、何」
「なんだよ」
怜緒の事を思い出してしまったじゃないか。
そう思いながら叶汰を横目で見ると、叶汰は押し付けるように野菜を渡してきた。
ちょ、野菜がジャージにかかるじゃないか。
私は心の中でそう訴えながら、野菜を持って自分の席へ向かった。
「……」
前だったら、叶汰の笑顔で心が揺らいでた。
だって叶汰は、私の元の好きな人。
だけどもう、何も感じない。
怜緒の事を思い出しても、何も感じない。
こういう時、思い出すのは壱の顔。
……本気だと思っていた怜緒の想いより、短期間の痛いだけだった叶汰への想いよりも。
壱が、好きなんだ。
今の私には、壱への想いだけが大切なんだ。
過去の恋なんかに、惑わされない。
もう、揺らいだりなんてしない。
——前より、少しは強くなれたのかな。
もう、振りかえらないで前に進めるようになったのかな?
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