コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.540 )
- 日時: 2011/05/16 23:15
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: zNloJ7/F)
- 参照: コンタクトほしい、あの人の顔をもっとはっきり見t(ry
第百四十八話『Chocolate』
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「——宮田の気になる人、誰よ〜」
美術室での、美術の時間中。
ここでも恋バナ炸裂タイムになっていた。
……皆が恋バナブームに乗ってるのならば、私だって乗っちゃうよ。
残りのタイムリミットは、五日しかないもんね。
ここはそろそろ覚悟を決めて、心の準備をしなきゃ。
そう思いながら、私は美術の作業をしていた。
結局、優の気になる人は綿津だったし——。
正直、驚きすぎて目が飛び出るかと思ったけど。
そういや愛奈も最近恋したみたいで、好きな人が四組に居るみたい。
春ですなぁ、皆さん。……今、冬まっさかりだけど。
そして壱の彼女については、愛奈いわく『俺の彼女は猫だ!』との事。
ここでまた新しく『壱は猫好き』という発見を見つける事が出来たのです。
……なんか、ちょっぴりモヤモヤするけど。
「……」
私はシャーペンをノックし、芯が出てこないのを確認してから筆箱を開けた。
まぁ、周りが恋バナ絶頂期になっている時に、一人だけ時代遅れになる訳にもいかなくて。
私は前の時間、由良と優に頼んでみた。
『——ねぇ、壱に『依麻がチョコあげたいって言ってたよ』みたいな感じで聞いてもらえますか?』
結局、人任せな私でございます。
由良と優は一瞬固まった後、私の肩を握った。
いや、握りつぶす勢いだこれは。
『依麻、壱にチョコ渡すんだねっ!! 成功するといいね〜!!』
『う、うん』
『でもやっぱさぁ、依麻本人から直接聞いた方がいいんじゃないの〜?』
『う、うん……。でもさぁ、相手に彼女居そうなんだよね』
『まじで!?』
そう、それが一番の問題。
メールも返ってこないし話しかけられないし。
連絡手段がないのだ。私の恋愛は。
『ダメだったらいいから、とりあえずさりげな〜く来てもらえると本当に嬉しい……と思いまして』
『なるほど〜。まぁ連絡手段がないなら大変だよなー』
『依麻頑張れよ〜』
『が、頑張る。頑張るけど、肩が痛いっす』
『……あ、ごめん』
粉砕骨折するよ、肩が!!
二人は手を放し、笑みを浮かべた。
その笑顔を見て、少しだけ怖くなる。
やっぱり私がさ、直接チョコの事聞かなきゃダメだろうけどさぁ……。
まぁとりあえず、ダメもとで二人に頼んでみた訳だ。
新しいシャーペンの芯を入れ、使い慣れたお気に入りのピンクのシャーペンをノックする。
新しいシャー芯が、先から顔を出した。
それと同時に、
「——壱ってさぁ、彼女いんの?」
優の声が聞こえてきた。
ナ、ナイス優!
私はシャーペンを机に置き、耳を傾けた。
壱は隣の席だし、志保ちゃんが居ないから優と壱は近い。
十分盗み聞きできるポジションである。
「え、……な、なに? 俺、耳遠くてさー」
壱が誤魔化すかの様にそう笑った。
絶対聞こえてたでしょ、壱。
そう思っていると、
「俺、彼女出来たことないもん」
自ら主張した。
やっぱ、聞こえてたんじゃん。
そう思っていると、後ろに居た健吾がこう呟いた。
「この人彼女じゃないの?」
この人——?
盗み聞きだから後ろを振り向く訳にもいかなくて、壱の顔も見れなかった。
だけど辺りに沈黙が走り、壱も無言のままでいる。
この人って、誰。
「——壱、逆チョコあげれば?」
「——……」
優の横の直樹が沈黙を破ったかと思いきや、すごいことを口にした。
逆チョコ……。
壱は壱で小声で何かを呟いたため、何も聞こえなかった。
こんなに近くの距離なのに聞こえないとは、恐るべし壱の小声。
その後も、優達も何かを小声で喋り——。
私は結局上手く盗み聞きをすることが出来ず、その場に撃沈していた。