コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.549 )
- 日時: 2011/05/24 16:05
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: LkcNOhbf)
- 参照: あーらららららん
第百四十九話『Valentine Mission』
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美術の時間が終わり、私はいつものように筆箱を持って教室に戻ろうとしていた。
そんな時、後ろから肩を叩かれる。
「ん?」
振り向くと、優が居た。
優が私の肩を叩いてくるなど、珍しい。
驚きながら見つめていると、優が私の耳元まで顔を近づけてこう言った。
「——壱、チョコ受け取るってさ」
「……っ!!」
——聞いて、くれたの?
そう目で訴えるかのように優を見ると、優は笑みを浮かべて去って行った。
チョコ、受け取る——?
優の言葉が、何度も何度も頭の中を木霊する。
やばい、やばいやばい。
私の頭は破裂寸前になりながら、気を紛らわす為に走って教室に向かった。
*教室*
教室に入ると、皆帰りの準備をしていた。
特に長く走った訳でもないし、本気で走った訳でもない。
だけどさっきの言葉を思い出すだけで、息が切れる。
「——壱、壱ー!」
由良の大きな声が私の所まで聞こえ、反射的に壱の方を見てしまった。
壱は原田くんの席で話していたが、由良の方を向いている。
原田くんの席の隣は、由良。
だけど由良から壱に話しかけるなんて珍しいな——……。
そう思いながらも、私は特に気にせずに帰りの準備をしていた。
その時、
「いでっ!?」
由良がいきなり飛び込んできた。
私は変な声を出しながら、由良を見る。
由良は顔いっぱいに笑顔を広げ、私に抱き着く。
そして、こう呟いた。
「壱、依麻のチョコもらうって!!」
「——え、」
由 良 ま で 聞 い て く れ た の !?
「よかったね依麻、絶対渡すんだ! 頑張れ」
「う、」
「照れちゃって〜」
顔が赤くなるのがわかった。
や、やばい……。
帰りの会が始まっても、私は隣の壱の顔が見れずに俯いていた。
健吾と疾風が後ろから、ジャンパーの袖を私のだんごヘアにいれたりしてきても、顔を上げる事が出来なかった。
**
「由良由良由良!!!!」
放課後。
私は由良の名前を叫びながら、廊下を走っていた。
由良は驚きながらも私を見る。
私は由良の腕をしっかりと掴み、ゆっくりと深呼吸をした。
「……あ、あのさ、ばれ、ばれんた、」
「あー、バレンタインのやつね〜! よかったじゃん!!」
「い、壱どんな感じだった!?」
そう、気になるのは壱の態度。
無理してるかもしれない。そうだとしたら、私はまた迷惑をかけてしまう——……。
しかし、その考えとは違う、想ってもいなかった答えが返ってきた。
「めっちゃニコニコしてたよ。顔赤くして」
「うへっ!?」
思わず、声が裏返った。
ニコニコ……!?
あの壱がニコニコ!?
顔を赤くして!?
え、え、え、え!?
「壱にね、『依麻がバレンタインにチョコ渡していいかな? って言ってたよ』って言ったんだ。そしたら『くれるなら、うん。いいよ』って言ってて、『ちゃんと依麻にホワイトデーのお返しあげるんだよ!』って言ったら、顔赤くして笑いながら『わかった』って。なんか照れてたよ」
「……っ」
やば、い。
由良の話が本当だとしたら、めちゃくちゃやばい。
「聞いてくれてありがとう!!」
この時点で溶けそうになってどうする。
まだ、『本人に渡す』という大きなミッションが残っているじゃないか。
でもこれで、これで——……。
壱に、チョコを渡せる。
緊張するけど、絶対渡して見せる。
頑張るよ、私!!
バレンタインまで、後五日——。
さぁ、残りの時間をどう過ごす?