コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.553 )
- 日時: 2011/05/25 17:19
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: hajkbKEb)
- 参照: どっこらわっしょい!!
第百五十一話『Valentine当日』
金曜日に材料を買いに行き、土曜日に資料をまとめて自分磨きして——。
日曜日に、チョコを作った。
一生懸命に気持ちを込めて。
上手くいくように、願いを込めて——……。
深夜の二時まで、チョコを作る作業はかかった。
「……うまくいくといいな」
私は出来上がったチョコを見つめ、小さく呟いた。
渡せるといいな。
受け取ってくれるといいな。
美味しく、食べてくれるといいな——……。
私は色んな願いを込めて、眠りについた。
**
——そして、月曜日!
二月十四日。
決戦の日が、やってきました!!
「依麻、本命持ってきた!?」
「おうよっ! バッチリ!!」
「見せて見せて〜!!」
朝から由良と優が、私の元へ近づいてきた。
私は福野に見つからないようにバッグを開け、二人に見せる。
中には、袋に小さく詰めた友チョコと——。
クマのストラップがついた、赤い水玉の四角い箱。
私はその二つを手に取った。
「これが友チョコで、これが……」
「これが?」
「……ほ、本命チョコ……」
「ふぅーん?」
由良とも優とも違う、低い声が聞こえてきた。
私はチョコから視線を外し、顔を上げる。
「……っうわぁ!?」
「はははは」
視界に疾風の顔が広がり、私は思わず叫んでしまった。
は、はははは疾風!?
い、いつの間に……!?
疾風は私のバッグを覗き込み、笑みを浮かべた。
「壱に本命チョコあげるのかぁ〜」
「な、なななな、何も持ってきてないし!」
「三上!」
「水城だし!!」
私はチョコを隠しながら、疾風を威嚇した。
疾風はドヤ顔をしながら怪しい笑みを浮かべ、私に近づく。
「さっきのこと、壱本人……いや、福野にチクってもいいのかい?」
「は、何も持ってきてないし」
「ふぅーん。ならチクってもいいだろ」
「駄目だし。プライバシーの保護だし」
「どんなプライバシーだよ」
疾風にツッこまれながら、私はバッグを置いた。
危ない危ない、福野にチクられたら全てが終わる。
私は疾風から少しずつ遠ざかりながら、心の中で溜息をついた。
……気を抜いてちゃ、いけない……。
*理科室*
「いつ壱に本命チョコあげるの」
理科室での実験の時、またしても疾風に言われた。
私は明らかに動揺しながら、首を横に振る。
「も、持ってきてないし!!」
「嘘ついて。見えちゃったし」
「覗き見だ、犯罪だ」
「顔赤いぞー」
「……っ」
疾風の方が、一枚上手みたいだ。
私は何も言えなくなり、その場で俯いた。
く、悔しい……っ!!
そう思っていると、
「よかったな、壱。本命もらえるってよ」
壱 に バ ラ し や が っ た
いや、でももう壱は私がチョコあげるの知ってるし——……。
いやいやいやでも、言っちゃあかんだろ。
「ん?」
「本命もらえるってよ」
「な、何が?」
疾風のアホ馬鹿まぬけ。
私の顔は更に真っ赤になり、ただ俯くことしかできなかった。
「…………」
こんな状況で、果たして渡せるのか。
幸先不安なスタートです……。