コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.554 )
- 日時: 2011/05/25 17:27
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: hajkbKEb)
- 参照: どっこらわっしょい!!
第百五十二話『迫る時間』
放課後まで、あと数時間。
さぁ、水城依麻——。
どうする?
「このクラスで演技うまい人誰?」
国語の授業中——。
福野が突然そう言い始めた。
その瞬間、クラスの皆の視線が壱に向いた。
「「壱」」
クラスの皆が、声を揃えて言う。
すると福野は笑みを浮かべ、チョークで壱を差した。
「じゃあ、壱にしてもらおうかな」
「えっ!?」
伸びていた壱は、勢いよく起き上がった。
周りのクラスメートは、皆ニヤニヤしている。
「じゃあ壱は、四歳の設定です。今から四歳になります」
「え、え」
「——はい、壱は四歳になりました。壱きゅんは、もう四歳です」
「壱きゅんて」
“壱きゅん”発言に、皆笑い始めた。
い、壱きゅん……っ!!
壱は少し照れくさそうに笑い、福野を見る。
「壱きゅんは、眠いので寝なければなりません。そこで、四歳の壱きゅんはお母さんに何て言いますか?」
「え……」
「ママって使ってもいいよ」
福野は黒い笑みを浮かべ、壱を見た。
壱はしばらく黙った後、
「……ママー、眠い、寝るぅ」
こう呟いた。
か、可愛い……。
四歳の壱て、四歳って!!
そう思ってると、
「……声低っ!!!!」
「壱、もっと高く〜」
福野と犬ちゃんが、順番にブーイングをいれる。
壱は少し戸惑った後、何回か咳払いをしてこう言った。
「ま、ママァァァー、」
「あはははははっ!!!!」
犬ちゃん大爆笑。
壱の高い声、可愛い……っ!!
私はニヤけるのを抑えながら、壱を見ていた。
「——じゃあ月日が経ち、壱は十四歳に成長しました。声も低くなって、体も大きくなっています。そんな時、あなたはママに何て言うでしょうか」
「え、?」
「壱、お母さんの事なんて呼んでる?」
「母さん」
あ、なんか壱の『母さん』っていう言い方、いい。
何が良いのか自分でもよくわからないが、なんかそう思ってしまった。
「じゃあさっきのパターンを四歳から十四歳に変えて、言ってみましょう」
「え……、——母さん、眠いから寝る」
壱がそう言った瞬間、教室は爆笑の渦に。
福野は背を向け、黒板に何かを書き始めた。
「——はい、十四歳になったら四歳と違うのはわかるよね? 壱はもう『〜から』と言う風に、言葉の間を付属させることが出来るよね?」
白いチョークで、ずらずらと書かれていく文字を写す。
教室は一瞬で静かになり、皆もノートに黒板の文字を写していった。
チョークの音が響く教室。
福野はふと字を書くのを止め、壱の方を見た。
壱もそれに気づき、顔を上げる。
「壱、寝る時もいつもこんな感じで言うの?」
「いえ、言いません」
即答。
壱のあっさりとした答えに、教室はまた爆笑の渦に包まれた。
「じゃあ、何て言って寝るの?」
「俺、何も言わないんだけど」
「無言で勝手に寝るのかい」
福野の鋭いツッコミが入り、教室は騒がしくなった。
ていうか壱、何も言わないで寝るって——。
親とコミュニケーションをとってないのかな?
まぁそういう私も人の事は言えないが、一応『おやすみ』は言ってベッドに向かう。
「……」
壱は家で、どんな風に過ごしているのかな。
どんな部屋で、どんな部屋着——……。
——なんだか、どんどん危ない方向に進んでいきそうだったので、私はそこで考えるのをやめた。