コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.562 )
- 日時: 2011/05/28 19:32
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: tVNOFy45)
- 参照: 傍に居たいよね、うん。
第百五十五話『Valentine後日』
次の日——。
「——壱、どうだったのよ」
「え?」
朝の会の最中、龍が小声で壱に話しかけた。
間に挟まれてる私は、机に顔を伏せて寝たふりをする。
距離を置くって決めたのはいいけど——……。
この席順、明らかに不便だよね。
「昨日、どうだったのよ」
昨日——。
忌々しい、二月十四日。
龍が言う、昨日とはバレンタインの事だろう。
壱は何も言わず、ただ黙っていた。
「……」
恐る恐る、少しだけ壱の方を見てみた。
龍の方を見ないで、口を固く閉じている。
……な、なんか怒ってる……!?
「……あ、あとで言うわ」
龍もそれを察したのか、一旦話を終わらせた。
怒ってるかはわかんないけど、明らかに壱は不機嫌だ。
私はそう心の中で思いながら、また顔を伏せた。
**
朝の会が終了し、壱の周りには犬ちゃんと原田くんと龍が集まった。
そして三人は興味津々な顔で、壱を見る。
「壱、昨日どうだった?」
「——ゃ……」
壱は、何か小さく呟いた。
気になる。気になるけど——。
『距離を置く』
この単語が頭を浮かんだ。
「……」
ここに、居たくない。
私はその場から立ち去り、後ろに居る優たちの所へ逃げた。
「お、依麻おっはー」
「おはよ」
「ほい、手紙」
「ありがとう」
由良に手紙をもらい、私はその場で手紙を読んだ。
内容は、バレンタイン一色——。
昨日の私の事、由良と亜夢先輩のバレンタインの話。
由良は亜夢先輩の家でチョコを渡し、あんなことやこんなことをしながらイチャイチャ過ごしたらしい。
——……うん、切実に羨ましいね。
なんかいっつも、由良にオイシイところを持っていかれてる気がする——……。
「なになに、『昨日のバレンタイン……」
「!? うわぁぁ!? 出た覗き魔!!」
後ろから声がしたので振り向くと、案の定そこに疾風が居た。
よ、読まれたっ!!
疾風は笑みを浮かべ、私に指を差した。
「……な、なに」
「壱に、カバンの中身Xあげたの?」
「なにXって」
私は冷たく対応しているが、心の中は冷や汗まみれだ。
疾風は私の心の傷を抉るかのように、怪しい笑みを浮かべている。
「あげたの」
「あー、うるさいうるさい」
「本人に聞けばわかるよ」
私が冷たくあしらうのと同時に、由良がそう言ってくれた。
聞いてほしくないけど、自分の口からも言いたくない。
疾風は「……ふぅーん」と言った後、自分の席で伸び始めた。
……とりあえず、逃げ切れたみたいだ。
「——そういや、一時間目から体育じゃん!!」
「え、まじ?」
由良がそう言ったので、顔を上げる。
見れば、さっきまで居た壱たちも居ない。
「ほら依麻、ボケッとしてないで行くよー!」
「あ、あぁ、うん」
優に引っ張られながら、私は体育館へ向かった。