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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.577 )
日時: 2011/06/02 21:18
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: otheHgZZ)
参照: 大好きなんだよ。

第百六十二話『矛盾≒気持ち』


**


「水城依麻、復活いたしました! ご迷惑かけてすみませんでした!!」


給食の準備中、私は由良に向かってそう言った。
これが、空元気と言うのだろうか。
心は複雑なままだったが、私はテンションを上げた。


「あひょーん」
「おぉ、依麻が突然テンション高くなった」
「あひょズビスだから」
「意味わかんないけど、とりあえずよかったね〜」


由良も笑いながらそう言ってくれる。
本当、ご迷惑をおかけいたしました。


「壱ーっ、これ見ろよ〜」
「なーんだいっ!? ……おぉうっ」


一方——。
壱の方も、急にテンションが上がり始めました。
三時間目と四時間目のあの表情が気になるけれど、とりあえず元気になってよかった——……。
やっぱ元気が一番だよね、うん。


そう思いながら壱を見ていると、


「!」


壱がチラ見してきた為、私は慌てて顔を逸らした。
危ない、見続けた事がバレてしまう……ってそうじゃなくて!!
諦めなきゃいけないのに——……。


なんだか振りだしに、戻ってしまった。





**


五時間目は、美術だった。
美術室へ行くため、私と由良は話をしながら廊下を歩いていた。


「——そういや、美術の席って前回の席と一緒だよね〜」
「前回の席?」


由良がそう言ったので、私は少し目を丸くした。
前回の席、と言ったら——……?

















「……」


——やっぱり、壱の隣だった。
私は硬直しながらも、無言で席に座る。
気まずいし、頭の中では『諦めなきゃ』信号が鳴り響いていた。
だけど、今日で壱と隣の席で居られるのは最後でもあるので——。
さっきみたいに避けるのは、もったいない気がした。
……なんて、考えちゃうなんて。
やっぱり頭の中と心の中は、矛盾している。


そう思っていると、


「——壱ー」
「……あ?」


由良が近付いてきて、壱の横に来た。
壱は顔を上げ、由良を見る。


「壱の席と由良の席、交換しよ。由良の席、原田くんの隣だからいいっしょ?」
「お、やった〜」
「壱の席借りるよ」
「あ、うん」


そんなやり取りをした二人は、席を交代し始めた。
……およ?


「やっほ、依麻〜! 隣いえーい!」


由良が陽気な笑顔で言ってくる。
由良が壱の席——つまり私の隣に来て、壱は原田くんと隣になった。
さ、最後なのに……っ!!
いや、諦めなきゃいけないんだけどさ。だけどさっ!!


……まぁ、いいか。
神様もきっと『さっさと諦めろこのカス』って言ってるのかもしれない。
それならこういうきっかけは必要さ、うん。


そう思っていたが——……。


「由良、こっちおいでよ〜!」
「お、優近いじゃん〜! 了解っ」
「え、ちょ、由良」


数秒後、優に呼ばれた由良は遠ざかって行ってしまった。
おいおいおいおいおい。
隣に居るんじゃなかったんかーい。


「……」


ぽつーん。
由良が隣に居なくなったせいで、左は寂しくなりました。
軽く心が折れそうだよ、私。
だけど嘆いていても仕方がない、作業を続ける事にした。


「——依麻、寂しっ」


優がそう言った瞬間、心が完全に折れました。
寂しいよ、壱も遠いし——。
……って、また考えてしまった。
あぁもう、心の中は我侭だ——……。
私は気を紛らわせるために、作業に熱中する事にした。












数分後——……。


「……もーどろっと」


壱がそう言いながら、私の隣に戻ってきた。
そしてそこの席から、原田くんと話をし始める。
う、うぉぉぉぉぉ!!
壱、戻ってきてくれた……!!


偶然だと思うけれど、嬉しかった。
寂しかった隣に君が帰ってきてくれた事で、心の中は暖かくなる。
どうして、なんだろう。
頭ではこんなに、諦める事を選んでいるのに。






——やっぱり、心は馬鹿正直だ。
私は、どうすればいいんだろうか。