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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.587 )
日時: 2011/06/10 00:34
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: JZOkdH3f)
参照: 君がくれた勇気は おっくせんまんおっくせんまんっ←

第百六十七話『犬ちゃんとの会話』


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あっという間に全ての授業が終わり、帰りの会。
今日も壱と接点はなかった。
心の中で小さく溜息をつき、私は前を向く。


——その際に、優の前の席の犬ちゃんと目が合った。


「……」


壱の時だったら、すぐ逸らしちゃうのに——。
数秒間犬ちゃんと目が合い、逸らすに逸らせなくて固まった。
すると犬ちゃんはいつものように人懐こい笑みを浮かべ、


「家庭科のワークの答えある?」


こういった。
あ、なんだ、ワークの答えね。
ワークの答え——……。


「……出しちゃった」
「がくっ」


犬ちゃんがうなだれるように頭を下げた。
犬ちゃん可愛い……っ!!


「答えごと出したの?」
「うん。……ごめん」


軽く苦笑いを浮かべると、犬ちゃんも軽い笑みを浮かべた。
犬ちゃん、顔はかっこいいけど性格が可愛い。
癒し系だよね、本当。


そう思っていたら、


「……お」


ワークが手元に返ってきた。
犬ちゃんを呼ぶにもなんだか呼びづらく、必死で視線を送った。
犬ちゃん、犬ちゃん気付けー!!


そう心の中で叫びながら犬ちゃんにテレパシーを送ると、偶然なのかわからないが振り向いてくれた。
お、おぉぉ……っ! テレパシー、大成功。
そのまま目が合い、犬ちゃんは私のワークに目を落とした。


「……あ、ワークの答え貸してもらえますか?」


さっきまでタメだったのに、何故に敬語。
疑問に思いながらもワークから答えを抜き取り、犬ちゃんに差し出した。


「いいよー。はい」
「ありがとう、借りまーす!」


犬ちゃんは弾むように返事をし、自身のスポーツバックにしまう。
しかし何かを思い出したかのように、すぐに顔を上げた。


「……あ、これどうにかなっちゃっても大丈夫ですか?」
「え、どうにかって何?」
「あ、いや、折れたり破れたりしても……」


どんな使い方するんだ、犬ちゃんよ。


「全然いいよ〜。折れたら折れたでいいから使って」
「どーもーっ」


折れようが破れようが使えれば問題ないので、OKサインを出して笑みを浮かべた。
いやぁ……それにしても、犬ちゃん可愛すぎるなぁ……。


……思えば、これが犬ちゃんと一番長く会話した時かもしれない。


壱ともこんな風に、会話できたらいいのに。
長い会話じゃなくてもいい、一言でもいいから。


普通に会話、出来たらいいのにな。