コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.589 )
- 日時: 2011/06/10 02:31
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: JZOkdH3f)
- 参照: 君がくれた勇気は おっくせんまんおっくせんまんっ←
第百六十九話『ほんの些細な出来事』
次の日——。
「はい、全員注意ーっ!!」
朝から響く、福野の声。
な、何事だ……?
今ちょうど来た私は、立ち止まってる福野の後ろから教室を覗いた。
見れば、壱含む大勢の男子が窓側の所に座っていて、注意されたみたいだ。
普段、朝は壱あそこにいないのに……珍しい。
そう思いながら、私は席についた。
「!!」
ふと壱を見ると、壱は理科のワークをパラパラしていた。
そして壱は立ち上がって、理科のワーク出しにいく。
私は毎日理科のワーク派で、壱はノート派だったのに……。
偶然だけど、二人だけ理科ワークっていうのがドキドキする。
こんなの本当に些細なことだけど、嬉しかった。
**
朝の会が終わり、次の授業の準備をする。
朝って……眠い。
何回も欠伸を連発し、重い瞼を擦りながら自分の席でボーッとしていた。
すると、
「……ん?」
眠くていつも以上にぼやける視界の横から、ノートが出現した。
驚きながら顔を上げると、壱が私にノートを差し出してる。
……思考が数秒停止した。
壱がノート……私のノート……? えぇぇ!?
手、手、手渡し……っ!?
学習班だから配ってるのかな……?
数秒固まったままでなかなか受け取らず、茫然としていても。
壱は、私にノートを差し出したままでいる。
——もしかして、受け取るまで待っててくれてるの?
机の上に置いてもいいのに……。
手渡しなんて、勘違いしちゃうよ。
「っ、ありがとう……っ」
眠気が一気に覚め、状況をゆっくりと理解する。
そしてやっと絞り出すように出した声は、震えていた。
「……っ」
壱の手からノートを受け取るほんの一瞬の時間が、とてもゆっくりに感じる。
周りの音が一気に聞こえなくなって、周りなど見えなくなる。
壱は私がノートを受け取るのと同時に、去っていった。
残されたのは、壱に差し出されたノート。
そして微かに残る残像と、もどかしい心。
……頬が、熱い。
「……ほーお?」
「!?」
疾風が、横から笑みを浮かべる。
い、一部始終を見られてた……!?
「……な、何?」
「別になーんにも?」
疾風はニヤニヤと笑みを浮かべたまま、私を見ている。
その笑み、怪しすぎますよ。
「……ほーお……」
疾風、絶対わかってるよね。
私が今、ドキドキしているのも。
壱の事が好きなのも、知っているし——……。
いけないいけない。
一回、冷静になった方がいい。
私はそう思い、立ち上がる。
まだ頬が熱いのを感じながら、水を飲みに廊下に出た。