コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *叶恋華* +実話+ ( No.594 )
日時: 2011/06/11 03:44
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 6mW1p4Tl)
参照: 大好きだぁあぁぁぁぁ←

第百七十一話『単純に、』


君が好き。


ただ、それだけ。


——でも それが全て。










休み時間。
由良と私は、教室で恋バナをしていた。
先程の出来事がまだ心の中をくすぐっているが、私は由良の話に耳を傾ける。


由良は、最近亜夢先輩とうまくいってないみたいで——。
代わりに、同じクラスの綿津が気になっているみたいであった。
綿津……あの人のどこかいいのかわからないが、何故か綿津はモテる。
光中の女子の感覚は謎だったが、人の恋を侮辱する訳にもいかないので。
私は黙って話を聞いていた。


由良が大きな声で恋バナをしている横で、壱含め大勢の男子は集まって何か話していた。
本当、いつも壱の周りには男子がいっぱいだ。
何を話しているか少し興味を持ったが、特に気にしないでおいた。
男子には男子特有の会話があるしね。


「うちら片想いいぇーい」
「メール返ってこないいぇーい」
「話せないいぇーい」
「接点なーい」


由良が次々と歌う様に言葉を並べ、私とハイタッチをした。
その際に、壱たちが一瞬こっちを見た。
いきなり大勢の男子たちがこっちを見たので、私と由良は軽く驚いた。
壱たちはこそこそと、何かを話し始めた。


「……何なんだろうね」
「う、うん……」
「まぁ、気にしないで恋バナの続き! 依麻、聞いて聞いて〜」


由良が再び話し始めたので、私は頬杖をついた。
男子たちの行動は気になるけど……。
まぁ、いいか。


そう思っていると、


「——壱、好きな人誰?」


乙葉が突然そう言いだした。
男子たちは皆顔を上げ、乙葉を見る。
そして小声でこそこそと話し始めた。
当の本人の壱も、何か小さく呟いている。


「——気になる」


ふと、耳に入った言葉。
……気になる?
この流れからいくと、もしかして——……。
壱、気になる人居るの!?


「……」


だ、誰だ?
やっぱ優香ちゃん?
マシな人=気になる人っていうこともあるかも知れないし——……。
壱の気になる人、優香ちゃんなのかな……。


なんか、嫌な事を聞いてしまった。


**


理科の授業中。
学習班の人がプリントを配るように頼まれ、席を立ちだした。
壱も学習班なので、プリントを手に持って配っている。


「……」


壱は私の前にプリントを差し出してくれた。
一瞬戸惑ったが、私は壱の手からプリントを受け取る。
そして、


「ありがと〜」


頑張って、出来るだけ普通にお礼を言ってみた。
……うん、今日は声震えなかった!!
少しの達成感に浸っていると、壱は前の席の冬香ちゃんの元へ向かうのが見えた。


「……」


壱は冬香ちゃんの机にプリントを置き、去って行った。
冬香ちゃんには、手渡ししなかった——……?


手渡しされるされないなんて、周りから見ればくだらない事かもしれない。
だけど、私にとってはとても重要な事。
私に手渡ししてくれる、なんて——……。


深い意味はない。
壱は普通に、渡してくれているだけ。




それでも、単純で馬鹿な私にとってはとても嬉しい事であった。