コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.598 )
- 日時: 2011/06/17 23:29
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: bFAhhtl4)
- 参照: 大好きだぁあぁぁぁぁ←
第百七十二話『抱いた疑問』
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刻々と時間が経ち、五時間目。
五時間目は、英語の授業だった。
英語が苦手な私にとって、この時間は苦痛そのものである。
そんな中、
「——学習班、英語のプリント返却して〜」
先生がそう言い、学習班のメンバーにプリントを渡した。
もちろん壱も、その中に居る。
……やっぱ、かっこいいなぁ……。
また手渡ししてくれるかな?
そんなくだらない事を考えながら、私は壱を見つめていた。
「——なぁ、三上」
「……水城ですけど」
「これ、何かわかる?」
そんな時、隣の疾風に話しかけられた。
疾風の手には、使いやすそうなペンが——。
「ペン?」
「うん」
「……ちょ、何書いてるの!?」
疾風はペンのキャップを開け、私の机に何か書きだした。
しかし、文字は机に浮かび上がっていない。
……ライトで照らせば見える……ってやつか。
私は身を乗り出し、机の文字に注目してみた。
「なんて書いたの?」
「ん」
疾風が文字にライトを当てる。
ライトの中に文字が浮かび、私はその文字をしっかりと見た。
『珠紀壱』
——……って、おい!!
「ちょ、消してよ」
「残しとけよ」
「はぁ!?」
いくら見えない文字でも、残したくない!!
私は疾風からライトを取り上げようと手を伸ばした。
その時、
「疾風、ナンパしてるー」
健吾のからかうような口調が聞こえてきた。
「「はぁ!?」」
私と疾風の声は、同時に重なる。
何故ナンパ。
しかも疾風、彼女居るし!!
誤解を招くことを言っちゃいけないよ、健吾。
そう思っていると、
「……あ、」
プリントを持った壱が、ちょうど来た。
……なんか、タイミング悪い……。
そう思っていると、壱は一つのプリントを疾風の机に勢いよく置いた。
プリントは少し折れて、音を立てる。
なんだか置き方が雑なような——……?
「……え、二点って」
プリントを見た疾風が、小さく笑った。
あの頭のいい疾風が二点!?
そう心の中で驚いていると、疾風が壱にプリントを差し出した。
「しかもこれ、俺のじゃねぇし」
……え?
疾風のじゃ、ない——?
壱はプリントに視線を落とした後、ゆっくりと疾風を見る。
意味がわからなくなりながらも、私は疾風と壱を交互に見上げた。
「返品するわ」
「は」
壱の声色は、なんだかいつもと違った。
怒ってる——……?
いや、でもなんで!?
疾風はそんな壱に向かって、プリントを突き付けた。
「お前が渡せよ」
「……」
疾風がそう言うも、壱は無視して去って行った。
壱の態度からして、なんだか怒ってるっぽかった。
疾風となんかあったのかな……?
そう思ってると、
「ん」
「え?」
疾風は壱から受け取ったプリントを、投げるように渡してきた。
……why?
疾風のじゃなくて、壱のでもないプリント。
持ち主不明の少しぐちゃぐちゃになったプリントに、私は目を通した。
「……え、これって……」
私 の じ ゃ ん
プリントには私の汚い字で『水城依麻』と書いてある。
な、なんで!?
なんで壱、私に渡さないで疾風の机に置いたの?
「……なんで、」
意味が分からない。
先程の理科の授業も、前の時だって——。
いつも、壱は私に直接渡してくれた。
それなのに、なんで今は疾風に渡したの?
しかも壱は、なんだか怒ってるっぽかったし。
壱の態度、壱のいつもと違う口調。
そして、雑なプリントの置き方。
私が壱の方を見ても、壱は全然私の方を向いてくれなかった。
……私に、怒ってる?
え、でも私、なんかした!?
心辺りが全くない。
全くないけれど、無意識のうちに何かしちゃったかもしれない。
私は必死に今日の記憶を巻き戻した。
——だけど、やっぱり心辺りなど見つからなかった。
それ以上に、壱と接点がないし。
「……?」
壱が、よくわからない。
とりあえず、もうすぐ授業も終わるし気にしない方がいいよね……。
うん、そうだ。それが一番いい。
私はそう思い、考える事を中断した。