コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.599 )
- 日時: 2011/06/17 23:46
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: bFAhhtl4)
- 参照: 大好きだぁあぁぁぁぁ←
第百七十三話『健康調査』
「修学旅行の健康調査、出してないの志保と珠紀壱だけなんだけど!!」
次の日の朝の会。
ヤケに鼓膜に響く大きな声で、福野は言った。
修学旅行の調査——。
あぁ、もう三月だもんね。
三年生の五月に修学旅行があるので、学校ではそろそろ準備や手続きが始まっていた。
「壱〜!!」
男子たちが笑いながら、壱に注目した。
壱は軽く頭をかきながら、苦笑い。
その態度を見て、福野は呆れたように溜息をついた。
「行かないの、あんたたち」
「行く」
志保ちゃんがだるそうに呟いた。
福野は腕を組み、壱を睨む。
状況を理解した壱は慌てて頷き、
「いぃ行きますっ!」
笑いながらそう呟いた。
壱の言い方が面白くて、周りから笑いが起こる。
しかし福野は冷たい表情のままで、壱を見つめていた。
「行くなら早く出せよ、壱」
「だって紙ない……」
「紙ならある!」
福野は教卓に向かって、修学旅行申し込み用紙を叩きつけた。
壱は「おっ」と目を輝かせ、周りは更に笑い出す。
そのクラスの雰囲気を見て、福野は更にあきれた表情になった。
「いたせりつくせりだべ」
「あ、ありがとうございます!」
福野の呆れ口調に対し、壱の明るい声でのお礼。
……会話、噛み合ってない……。
聞いてるこちら側は、爆笑ものだ。
「……お礼言うなら早く取りに来いよっ!」
「……え、あ」
福野はその笑いを破り、壱に鋭くツッコんだ。
それでも壱は取りに行かない為、福野は早足で壱の席に向かった。
そして勢いよく、用紙を壱の机に叩きつける。
派手な音が、教室中に響いた。
しかし壱は、
「うぉぉ、ありがとうございまーす」
相変わらずの、対応だった。
福野は更に呆れ、一気に力が抜ける。
どうやら壱の方が、一枚上手だったらしいです。
「——じゃあ、さっそく書きまーす」
壱は筆箱からシャーペンを取り出し、右手に装備した。
そして用紙とにらめっこをしながら、順番に書いていく。
……が、
「これって、保護者のなくていいっすか」
「……」
保護者印の所で壱は手を止め、福野に質問した。
福野は呆れた顔のまま、黙って壱を見ている。
「……え」
辺りに沈黙が走ったので、壱は焦り始めた。
しかし次の瞬間、福野は大きく口を開き、
「わかったよ保護者なしでいいよお前修学旅行でアレルギーとか出てもしらねぇからな」
見事な棒読み口調で、そう言い放った。
壱は数秒固まった後、少し苦笑いを浮かべて「アレルギーなんてない」と言いながらまた手を動かし始めた。
「壱、本当にアレルギーないの?」
そんな壱の様子を見ていた犬ちゃんは、壱に向かってそう言った。
壱は再び手を止め、犬ちゃんの顔を見る。
「ないよ。——……あ、猫っ」
ア レ ル ギ − あ る じ ゃ ん
誰もがそう心の中で思ったことだろう。
でも壱のお陰で教室中は爆笑の渦に包まれ、朝から和やかな雰囲気となった。