コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.600 )
- 日時: 2011/06/17 23:47
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: bFAhhtl4)
- 参照: 大好きだぁあぁぁぁぁ←
第百七十四話『片想い的、恋愛論』
一番知りたい気持ち。
それは、
何よりも知りたい、君の気持ち。
好きな人の気持ちが簡単に分かれば、こんなに苦労しません。
こんなに悩んだりもしません。
恋愛って、どうしてこんなに難しいのでしょうか。
「……はぁ」
授業終了のチャイムが鳴り響くと同時に、私は大きなため息をついた。
周りの生徒は皆立ち上がり、五分休みを堪能し始める。
私は自分の机で伸び、ひたすら紙の端を黒く塗りつぶしていた。
「——依麻、何それ」
「!?」
頭上から声が聞こえ、勢いよく顔を上げた。
目の前には、家庭科の教科書を持って笑みを浮かべている由良。
「悩みごと?」
「んー……なんかさぁ、色々考えてた」
「色々って?」
「そりゃあ、由良にならわかるっしょ」
私は冗談交じりにそう言って笑みを浮かべ、由良を見た。
由良は一瞬きょとんとしていたが、すぐに顔を明るくさせた。
「わかった。恋愛でしょ?」
「あったりー」
私は由良に向かって、小さく拍手をした。
——朝、壱が皆を笑わせてから教室の雰囲気が和やかになって。
退屈な授業が進んでいく中、色々考えてしまっていた。
考えれば考えるほど、どんどん深く深く入り込んでいく。
そんな事を繰り返しているもんだから、もう時はすでに六時間目の授業に入ろうとしていた。
「……あー、六時間目、移動教室だっけ?」
「そうそう、家庭科。だから依麻、早く行こうよ!」
由良に急かされ、私はバッグから教科書を取り出した。
周りを見れば、もう誰もいない。
どうやら教室に居るのは、私たちだけだった。
「——……」
教室から出るとき、ふと窓の外を見た。
今日はどっちかっていうと、天気がいい。
三月に入った景色は、雪がまた残っていて春が感じられないけれど——……。
だけど、なんだか心地よく感じられた。
「——セーフッ! まだ先生来てなかった〜」
家庭科室の前に行くと、クラスの人達が立ち止まって先生が来るのを待っていた。
由良と私は壁に寄り掛かり、小さく溜息をつく。
周りのクラスメートたちはそれぞれ私語をしていて、廊下は少し騒がしくなっていた。
そんな時——。
私の耳に、ある言葉が聞こえてきた。
「——壱、恋しちゃったの?」
……え?
一瞬、耳を疑った。
だけれど、しっかりはっきりと聞こえた。
犬ちゃんの声で、『壱、恋しちゃったの?』って——。
「え、——……」
男子に囲まれた壱は、何かを呟いていた。
私は目が点になり、頭の中でただひたすらと犬ちゃんの言葉を繰り返していた。
壱、恋しちゃったの?
いち、こいしちゃったの?
イチ、コイシチャッタノ——……?
…………壱が、恋をした——?
思考回路が繋がり、私はやっと我に返った。
さっきよりもはっきりした頭の中で『好きな人』と言う単語が浮かんでくる。
その単語と共に『ホモ中』と言うキーワードが出てきて、一気に不安に襲われた。
壱の好きな人が、ホモ中の人だったら?
ホモ中じゃなくても、壱に好きな人が居るのには確かだ。
そうなれば、同じ中学校で思い浮かぶ人は——……。
『優香ちゃん』
「……っ」
パズルが完成するように単語が繋がり、一気に胸が締め付けられた。
考えたくないけど、やっぱり考えてしまう。
嫌でも、結びつくその答え。
……どうやら、六時間目の家庭科も——……。
色々と、考えなければいけないようです。