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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.607 )
日時: 2011/06/27 16:43
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: qNIh9ax1)
参照: 大好きだぁあぁぁぁぁ←

第百七十七話『強い想い』


こんなにも強く想ってるのに。


どうして、あなたには届かないの?











次の日——。


「ねぇ、壱〜!」


今日の授業中も、志保ちゃんは壱にベタベタしている。
私がヤキモチを焼く資格なんてないけれど——。
でもやっぱり、イライラしてしまう。


だって、壱があんな風に女の子と話す姿、初めて見たから。
壱は普段、女の子とあんな風に喋らない。
なのに——……。


「俺、チラ見されるの——なんだよね」


頭の中の想いを遮られるように、壱の声が聞こえてきた。
ふと顔を上げて壱の方を見ると、志保ちゃんと何やら話している。
……何、話してるの?


「イライラする」


耳を傾けていると、そんな壱の声がはっきり聞こえてきた。
チラ見……イライラ、する?
——私のこと?
私が壱に対して、チラ見しちゃうから?


一瞬にして、不安がいっぱいになる。
もしかして、ずっと壱は私に対してイライラしてたの——?
そうじゃないと、信じたい。
信じたいけれど——……、


「壱さぁ、彼女とか作らないの?」


志保ちゃんのその言葉に、おかしなくらい心臓が飛び跳ねた。
壱は何かを呟いているが、声が小さくて聞こえない。


「壱、彼女いてもおかしくないのに」
「……」
「モテ——……」


志保ちゃんの声も、壱の声も聞き取れない。
いや、もしかしたら私は聞き取らないようにしていたのかもしれない。


「壱、面白いし優しいし……」


やめて。


「ていうか、優しすぎるもん〜!」


やめてよ。
心の中が、ざわざわして。
志保ちゃんの言葉だけが、妙にはっきりと聞こえてきた。


「……っ」


志保ちゃんは、壱のことが好きなの?
やだやだやだ。
そんな笑顔で、壱を褒めないでよ。
そんなに壱に近づかないで。


心に黒い塊が留まるような感覚がするのと同時に、急に切なくなった。
……私、嫉妬してる。
自分が近づけないからって。
片想いだからって。
彼女じゃないのに、嫉妬している。


「——じゃあさ! その人だけに好きって言われるのと、皆から好きって言われるの、どっちがいい?」
「……その人だけ」


志保ちゃんのはっきりした声に、今度は壱のはっきりした声が聞こえた。
一気に胸が、締め付けられる。
私の『好き』は、壱にとっては皆から『好き』って言われる中の一つなのかな。
その人だけに『好き』って言われる気持ち。
そんな気持ちは、どんな気持ちなのかな。


私は、壱が好き。
だから壱だけに『好き』って言われたい。
だけど壱は、どう思ってる?
私の事を、どう見てる?
ただのクラスメート?
転校生?


恋愛って、難しいよね。
自分だけが想っていても、相手が想っていなければ——。
自分の想いは、ただの一方通行になる。
つまりは、ただの片想い。
私の想いは、一方通行。


「……」


がむしゃらに進むくせに、砕けるのが怖くて、ただ見てるだけの想い。
溢れる気持ちを止められないくらい、『好き』って想う。


……それだけの想いじゃ、駄目なのかな。