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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.619 )
日時: 2011/06/29 21:13
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: 7tR/DNy8)
参照: 大好きだぁあぁぁぁぁ←

第百八十一話『恋愛の意味』


こんな気持ちなんて。


いっそのこと、捨てちゃいたい。


でも無理だよ、そんなの。


あなたのことが、好きすぎて。





**


次の日——。


「……」


今日も壱とは特に何もないし……。
目も合わないし、壱はこっちを見向きもしない。
……やっぱ、いつもより避けられてる気がする。


勝手に期待して、勝手にドキドキして……馬鹿みたい。


胸が締め付けられて、泣きそうになる。
私の、馬鹿。


「……はぁ」


そんな私の横で、もう一人溜息をつく人物が居た。
宮田優——……。
優はいつもこんなに溜息をつかないのに、今日は三十分に一回のペースで溜息をついていた。


「愛奈ぁ……。どうしたらいいかなぁ……」
「うーん……」


そんな優の横では、少し困り顔の愛奈が居た。
愛奈は軽く優の背中を撫でて、慰めている。
……優、なんかあったのかな……?


「……ちょっと、トイレ行ってくる……」


しばらく優と愛奈を見ていると、優が去って行った。
優の背中を見ながら、私は愛奈の近くへ行く。


「ね、愛奈……。優、どしたの?」
「実は優さぁ……」
「うん」
「門倉、好きじゃん?」
「あぁ、うん」


門倉——。
優の片想いの相手。
……となると、恋の悩みかぁ……。
私と同じだなぁ、と思いながら頷いた。


「優、本当に門倉に嫌われてるんだよね」
「え、そうなの?」
「まなに聞いた話だから本当かわかんないけどさ……うん」


愛奈は小さく溜息をつき、腕を組んだ。
優、門倉に嫌われてるの——……?
好きな人に嫌われるって、一番辛い。
好きな人に好かれない、なんて。
こんなに想ってるのに叶わないなんて……。
そんなの、辛いよ。


「……私も、壱に嫌われてる……のかなぁ」


優と門倉、メールとかの話を聞けばいい感じだったのに——。
こんなことになるなんて、人の心は本当にわからない。
壱も私が、嫌いなのかな。
あんなにいい感じの恋をしていた優でさえ、門倉がそう思っているなら——。
私なんか、とっくに嫌われてるよね。


そんな風に考えたくないけど、やっぱ悪い方向へ考えてしまう。
やっぱダメだわ、私。


「……うーん……」


愛奈は少し俯き、小さく唸りだした。


「……恋愛って、一人だけでやるんじゃなくて、相手もしなきゃいけないしょ?」


やがて呟いた愛奈の言葉は、とても重く感じられた。
愛奈はゆっくりと顔を上げ、私を見る。


「自分一人だけ想ってたって、相手がどう想ってるか……でしょ?」
「……うん」
「自分勝手に進んじゃ、恋愛なんて成り立たない」
「うん」
「相手の事も考えなきゃいけないから、難しいよね」


愛奈はそう言って、軽く笑った。
……恋愛は、難しい。
こうして恋愛をしている今、痛いほどそう感じる。


「……そうだよねぇ……。私一人だけ勝手に進んでも、壱がその気にならなきゃねぇ……」
「結局人の心って、わかんないんだよ。だから私は恋愛とかしない」


愛奈はそう言って、鼻で笑う。
私は愛奈の肩に手を置き、愛奈の頬をつついた。


「……何、依麻」
「……恋愛って難しいけどさ……。辛いけど、楽しいと思うよ。私的にだけど」
「……」


だから、恋愛ってやめられない。
だから私は、何回失恋しても恋するのをやめられない……んだと思う。
辛くて切ないけれど、やめられない。
相手と何かあったら些細な事でも嬉しいし、楽しいって思える。
そのくらい相手を好きになっちゃってるし、気が付けば諦めきれなくなる。


「……不思議ですよねぇ、愛奈さん」
「……それは、私にもわかるよ」
「うん」
「だけど私は……。——んー、やっぱ、恋愛とかそういうのは高校とかで十分かな! まだ私達は中二だし。焦らなくても、いいと思うけど?」


愛奈はそう言って、私の両頬を思い切り伸ばした。
私が奇声を上げると愛奈は笑みを浮かべ、その場から去って行った。


「……愛奈……」


……絶対頬、赤くなってる。
握力強すぎまっせ、姉さん。


『自分一人だけ想ってたって、相手がどう想ってるか……でしょ?』


愛奈の言葉が、復習されるように頭の中でリピートされる。
今カップルの人は、この試練を乗り越えて一緒に居る訳だよね?
『自分一人だけ想う』なんかじゃなくて、『自分も相手も想っている』状態。
そうなる為に、皆色々苦労してるんだよね?
色々悩んだり、悔んだりしてるんだよね?


私だけじゃ、ないんだよね。


「……ふぅ、」


なんか、少しだけ吹っ切れた気がする。
『諦める』とかどうとかじゃなくて。
大切なのは、『自分も相手も想っている』状態にすればいいって事だよね?
カップルはそれを乗り越えて、今幸せになれてるんだから——。
片想いの今、私はこの試練を乗り越えなきゃ。


私だって、幸せになりたい。
好きな人と、一緒に居たい。
隣で笑いたい。


——……明日から、頑張ろう。
明日こそ、頑張ろうか。