コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: *叶恋華* +実話+ ( No.622 )
日時: 2011/07/01 23:52
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: u5JYbeHw)
参照: それはハッピー?←

第百八十三話『三月十五日』


私が馬鹿だった。


期待しない方がいい。


悲しい気持ちになるのが、わかってるから。





**


卒業式が終わり、時は三月十五日——。
三年生が居なくなり、どことなく静かな学校はなんだか落ち着いていた。


「……はぁ……」


いつも通りの平凡な教室の片隅で、私は窓から見える景色を眺めながら溜息をついた。
そう、今日は三月十五日。
バレンタインデーの悲劇から、一か月。
——そう、一か月が経ったのだ。


本来で行けば、昨日の三月十四日がホワイトデー。
しかし、卒業式の振替休日のせいで昨日は学校が休みになってしまった。
そのおかげで、ホイワトデーは潰れてしまったのだ。


「……あー……」


お返し、もらいたかったのに。
そう考えると、大きな溜息が出るわ出るわ。
だけどもし、仮に昨日学校があったとしても——。
もらえたとは、限らないよね。
だって私があげたのは『普通』のチョコだし、由良に渡してもらう形になったし。


……思い出したくない過去、再来。


「依麻ぁ、元気出せってー! 壱から今日もらえるかもしれないじゃん?」
「……うーん」


由良の励ましの言葉が聞こえるが、私の気持ちは沈んだままだった。
もらえれば……いいけどさ。
そりゃあ、嬉しいけどさ。


第一、あのめんどくさがり屋の壱だよ?
いつもだるそうな壱だよ?
天然な壱だよ?
もしかしたらホワイトデーの存在さえも知らなかったりして……なんて。
壱はモテるから、きっと毎年誰か彼かからチョコもらってるはずだよね……。
そうなったら、嫌でもホワイトデーの存在知ることになるよね?
そう考えると、また虚しくなるけどさ!!


「壱——……」


突然、疾風の声が聞こえてくる。
その声に反応して振り向けば、何やら壱の周りに男子が集まって話していた。


「——……」


皆の声が小さいせいか、いつも以上に会話が聞き取れなかった。
や、盗み聞きするつもりではないんだけど……。
あのグループがこそこそと話しているときは、大抵恋バナな気がする。
……そうなると、やっぱ気になりますよねぇ。
気を紛らわすように小さく頭をかいていると、


「——お前はあの人だろ?」


疾風の声が、大きく響いてきた。
疾風の方を見ると、壱の方を向いている。
あの人……?
あの人って、誰?
もしかして、壱の好きな人?
まさか、壱は好きな人にチョコもらったの!?
他中? 同中? 誰誰々!?


「……」


壱は好きな人にチョコをもらえたから、私のチョコの味を『普通』と言って華麗に避けたのかもしれない。
私の好意を、避けたのかもしれない。
だから私にお返しの予定なんかサラサラなくて、好きな人に——……。
少し無理矢理な考えだけど、嫌でもそう考えてしまう。
ここまでネガティブ思考になるなんて……っ!!



「……ぽ、ポジティブにいかなきゃ……だよね」


ここまで深く考えたらダメだ、うん。
もう考えるのはやめよう。
良い方向へと進むように頑張らなくちゃ。


「そうだ、その調子だ!! 依麻!!」


横に居た由良が私の背中を叩き、一気に目が覚める。
……よ、よしっ!!


水城依麻、ネガティブ思考にならないように頑張ります!!