コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.623 )
- 日時: 2011/07/01 23:54
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: u5JYbeHw)
- 参照: それはハッピー?←
第百八十四話『Bad Whiteday』
ポジティブになりましょう、水城さん。
……そう頭で念じても、なかなか上手くいかなくて。
「……はぁ」
頭で念じ続け、数時間。
結局今日も何も起きないまま、放課後になってしまいました。
三月十五日、この日はやっぱりホワイトデーの代わりになんかならないよね——……。
あぁ、やっぱ壱は好きな人が居て、その人しか頭になくて——……。
——って、またネガティブになってる私!!
「——依麻、掃除してー」
「あ、はいはいはい」
こういう日に限って、掃除当番なんだよねぇ……。
私は小さく溜息をつき、ほうきを持った。
「……あれ」
やる気もなくただ適当にほうきを振り回していると、窓側の方に壱の姿が見えた。
今日、壱の当番は休みだったはず——……。
ほうきを動かしながら壱の方を見ていると、壱はこっちに背を向けてバッグを見つめていた。
「……?」
壱の横には、原田くんが居る。
壱が誰かを待ってるとしても、原田くんくらいしか思いつかないし——。
いやでも、原田くんは壱の横に居るよね?
疑問に思っていると、壱がこっちを見た。
「!」
一瞬目が合ったが、すぐ逸らされた。
壱は私から目を逸らした後、またバッグに視線を移す。
バッグ見て怪しい動き——。
三月十五日——……。
ま さ か ?
馬鹿な私は、一瞬でも期待してしまった。
そう、一度でも期待してしまえば負け。
恋の錯覚の思うツボなのに——……。
私は、ほんの少しだけ期待してしまった。
**
掃除が終わり、私は廊下でジャンパーを着ていた。
壱の怪しげな行動が気になっていたが、なるべく気にしないように自分をごまかしながら帰る支度をしていた。
だが、
「——……っ!」
バッグを肩にかけて顔を上げた瞬間、教室から出てきた壱と一瞬だけ目が合った。
思わずその場で固まっていると、壱は軽く苦笑いを浮かべて小走りで去って行った。
「…………」
私はその場で立ち尽くし、もう見えなくなった壱の背中を見つめていた。
……壱、苦笑い、浮かべてた。
私から目を逸らして、小走りで帰っちゃった。
なんだか虚しいけど、思ったよりショックは少ない。
ホワイトデー、もらえなかった。
そう、たかがそれだけ。それだけの事、なんだから。
きっと期待するのをやめれば、もっと辛くないんだ。
だけど私は馬鹿だから、そんなの無理だよね。
すぐネガティブ思考になるし、不安になるし悲しくなる。
ちょっとしたことでも、期待してしまう。
……好き。大好き。
ドラマみたいな波乱があっても、ドラマみたいな恋なんて、現実にない。
起こったとしても確率は少ないだろうし、私にはそんなのいらない。
私は私らしく、頑張りたい。
君を何とかしてでも振り向かせたいって思う。
かっこ悪くても、周りから嫌われても。
そんなの、構わない。
——期待するだけ、無駄。
押して引いて、期待するのをやめて。
いつか君の隣で、笑いたい。
「……」
冷静になってよくよく考えてみたら、男子がホワイトデーの次の日にわざわざ渡すはずないよね。
そこまでマメじゃないっしょ、男子は。
さっき壱が教室に居たのは、原田くんと何か話してたりしたんだ。
そうだ、絶対そう。
だからもう、私は期待しないようにしたい。
……ううん、『したい』じゃない。
期待しないように『する』にしなきゃ。
そう考えたら、不思議と少し前を向けた気がした。