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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.625 )
日時: 2011/07/05 21:18
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: r3vekOHJ)
参照: ふぁっきゅー☆←

第百八十五話『女の勘』


次の日——。


「……」


なんとか自分を慰めて。
期待しないように、なおかつ前に進めるように。
少し初心に返って、自分から壱と目を合わそうとしていた。
無理矢理な形でも、私が見てるから合ったとしても。
ただ単に壱と接点が欲しかったから、自分から視線を送っていた。


しかし——。


目が合いそうで、合わない。
壱はこっちを見そうで見ない。
絶対、私の視線には気づいてるはずなんだけどなぁ……。
さては、気付いてない振りをしている!?


嫌な答えが頭の中を過り、軽く心の中で気合を入れなおしながら壱を見た。
見ればこっちを見てるのは壱じゃなくて——。
壱の周りに居る男子が、一斉に私の方を見ていた。


「……っ、」


え、何これ。
皆してこっち向かないでよ、怖いじゃないか!!
もしかして、壱の事見てたのを皆に気付かれた……とか?
うん、その可能性十分あり得るぞ。
今日はいつも以上に壱の事見てたし——……。


一気に、全身に冷や汗が伝う感覚が襲ってきた。


**


「——じゃあ、宿題のプリント班になって丸つけしろ〜」


国語の授業。
福野の声が教室中に響き、クラスの皆は班体形にし始める。
私は下を向きながら机を移動した。
先程の冷や汗が伝った以来、あまり壱の方を見ないようになっているのだ。
これ以上周りにバレたら、恥ずかしくて顔から火が出るわ。


「——なんでそこの二人はやらないの?」


急に福野の嫌味ったらしい声が聞こえてきて、反射的に振り向く。
見れば、そこには怒られている壱と優の姿が見えた。
優は腕を組んで不機嫌そうな顔で福野を見ていて、壱は俯いてだるそうに話を聞いている。
なんで怒られてるんだろう……?


とにかく、壱のテンションが低い。
気のせいかもしれないけど、今日は朝からテンション低い感じがしたし……。
考えすぎかもしれないけど、ね。


……だけど、なんだか今日の壱は変だ。


**


「——依麻、給食当番でしょ? 手伝うよー」
「……あ、ありがと」


授業が終わり、給食時間。
横から由良に話しかけられ、私は我に返った。
そうだ、私給食当番か……。
ぼんやり考えながら、廊下を歩く。


「……ねぇ、由良」
「何ー?」


弾けるように明るい返事をし、由良は足を止めずに私を見た。
私も足を止めず、ゆっくりと口を開く。


「……なんか壱、テンション低くない?」
「そう?」
「なんか顔が暗いし、オーラも暗いし……。絶対テンション低いよ」


私は壱の顔を思い浮かべながら、そう言った。
由良は少し黙った後、首を傾ける。


「壱、いっつもあんな感じじゃん。だるそうっていうか……うん、クールだね」
「……そうかもしれないけどさぁ……」


確かに、由良のは正論だ。
壱はいつも気だるけな雰囲気で、クールなオーラが出ている。
だけど——……。


「……やっぱ、今日の壱は変だよ」


恋する女の勘は、不思議と当たるのです。