コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.629 )
- 日時: 2011/07/07 20:48
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: GMnx0Qi.)
- 参照: ふぁっきゅー☆←
第百八十六話『笑顔の理由』
「壱、なんかテンション低いよ?」
給食中、犬ちゃんがそう呟いた。
やっぱり、犬ちゃんも気づいたのか……。
絶対、今日の壱は変だよね?
テンション低いよね?
「どうしたの?」
「……なんでもない」
「大丈夫?」
犬ちゃんは心配そうに声を掛ける。
壱は無言で頷いて、黙々と給食を食べていた。
壱、どうしたんだろう……?
でもなんか、前の落ち込んでた時の壱とはちょっと違う。
どっちかっていうと、怒ってるっていうか——……。
なんていうか、とにかくなんか変なんだよ。
そう思ってると、
「疾風、壱なしたの」
犬ちゃんたちの班の会話を聞いていた健吾が、隣の疾風にそう聞いた。
疾風は飲んでいた牛乳から口を離し、飲み込んでからゆっくりと口を開く。
「壱、今不機嫌。なんか福野に言われてプッツンきたらしい」
「まじかー」
健吾は納得したように壱の背中を見る。
やっぱ不機嫌だったんだ……。
福野に言われた、ってことは……?
きっと、国語の時間に怒られてた時だよね?
福野の怒り方、細かいししつこいからねぇ……。
全然こっちの話聞いてくれないし。
そりゃあ壱だって怒るよね。
でもとにかく、元気になってほしい。
私はそう思いながら、壱の背中を見つめていた。
**
「ねぇ壱、なんで怒ってるの?」
五時間目が始まり、志保ちゃんが壱を心配そうに見る。
壱は答えようとはせず、無言のまま。
「ねぇ、なんでー?」
志保ちゃんは上目使いで壱を見る。
女の私から見ても、志保ちゃんの上目使いは可愛い。
う、うぬぬ……っ!
「……」
そこで壱は、志保ちゃんに向かって何かを呟いた。
志保ちゃんは人の心配をすると、理由を聞くまでなかなか放してくれないので、壱はそれを察したのだろう。
しかし壱の声は全く聞こえなくて、何を言っているのかわからなかった。
「なんて言われたの?」
志保ちゃんが笑顔で壱の話を聞いている。
壱は相変わらず口を動かしてるが、全くこっちに会話が聞こえない。
どんだけ声小さいんだ、壱よ。
でも、なんだかさっきより……。
心なしか、壱が元気になった気がする。
昼休みも疾風たちと居たし、さっきよりイライラが収まったのかな?
「壱、壱! 見てみて〜」
またもや犬ちゃんは察したのか、無邪気な笑顔で壱に話しかけた。
壱もそれを見て、小さく笑みを浮かべる。
笑った……っ!!
今日初めてみる壱の笑顔に、私の鼓動は速くなった。
**
授業も中盤に入った頃。
周りの心遣いが効いたのか、壱はいつも以上にテンションが高くなり始めた。
さっきまでのテンションの低さはどこへ行ったのか……。
壱は犬ちゃんと何やらやり取りをしてて、周りは爆笑している。
「本っ当にW珠紀面白い! 犬ちゃんと壱、コンビ組めば? 漫才やったら絶対爆笑」
志保ちゃんは笑いながらそう言った。
犬ちゃんと壱は顔を見合わせ、お互いに笑みを浮かべる。
「壱、コンビ組むかー?」
「よし、犬ちゃん! コンビ組んじゃうか!?」
犬ちゃんと壱は爆笑し始める。
壱の眩しい笑顔を見れるのは嬉しいし、元気になったのは嬉しいけど——……。
でも、その笑顔になった理由が志保ちゃんのお陰だったら?
壱を笑顔にしたのが、志保ちゃんだったら——……?
——そう考えると、少しだけ複雑な気分になった。