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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.636 )
日時: 2011/07/09 00:02
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: o/R20Vhb)
参照: ふぁっきゅー☆←

第百八十八話『嫌な予感』


昔からさ。


こういう嫌な予感だけは、当たるんだ。









**


次の日——。
朝、いつもよりちょっと早めに学校についた。
玄関を重い足取りで歩いていると、ドアの方を見て立ち止まっている生徒を発見した。
あのショートカットに革のスクバは——……、


「由良!」


由良だった。
笑みを浮かべて声をかけると、由良はゆっくりと振り向いた。


「おはよ」
「……」


由良に挨拶をするが、返事がない。
いつも自分から挨拶してくる由良が、挨拶して来なかった。
だけどこの時の私はさほど気にせず、話を続ける。


「由良、誰待ってるの?」
「ん? あー、優だよ」
「そうなんだー」


そこで一旦会話が途切れ、沈黙が走った。
……なんか、ちょっと何かが変な気がする。
この時点で、少しだけそう察していた。


「——優、おはよー!!」
「おはよー」


やがて沈黙を破り、由良は笑顔で向こうにいる優に手を振った。
優も小走りでやってきて、由良の横に来る。


なんだ、由良挨拶返すんじゃん。
さっきのは、聞こえてなかったのかな?
私はそう考える事にして、優に向き直った。


「優、おはよ〜」
「……」


あら、優さんもシカトですかい。
……まぁ、いいや。
この時は、特に気にしていなかった。


そう、この後起こる出来事なんて私には知る由もなかった。


**


朝の会が終わり、私は由良の席へ向かう。
その際に、由良の筆箱が見えた。
由良の筆箱は缶ケースであり、落書きまみれだったり、プリクラなどが大量に貼ってある。
そんな由良の筆箱が、昨日見たものと変わっていたため、私はそれを見ようと缶ケースを持ち上げた。


「由良、筆箱見せて」
「ん、いいよ」


持ち上げた缶ケースに視線を向ける。
由良の缶ケースの表面には、シールで『YURA-YUU』と貼ってあった。


……なんだか、嫌な予感がした。


「——あ、中は見ちゃ駄目!!」


中を見ようとしたとき、由良が大声でそう叫んだ。
そして私の手から、慌てて奪い取った。
私は驚いて、その場で立ち尽くす。



「……ちょっと、見ちゃダメなの」


行き場を失くした手を泳がせて茫然としていると、由良が筆箱を握りしめながらそう言った。
昨日まで見せてくれてた、筆箱。
なんで今日は、見せてくれないの……?
私は疑問に思いながら、由良を見る。


「じゃあ、筆箱の裏は?」


なんだか変な感じがした。
由良の筆箱の裏にはいつも、私と愛奈と優と、由良の好きな人の事が書いてある。
愛奈には「天然。馬鹿」。
優には「変態。幼馴染」。
私には「変人。ジョンソン」と書かれていたはずだが——。


もしかしたら、


「……裏もちょっと駄目、見せれない……」


私の所が、消されてるのかもしれない。
考え過ぎかもしれない、だけど——。
なんだか、朝から優も由良も私に対しての態度が変だ。


いくら鈍くても、誰でも気付くはずだろう。
この状況、なんかおかしいって。