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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.643 )
日時: 2011/07/10 02:31
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: smQzDzj0)
参照: きみは一人で行くんだぜっ←

第百九十一話『謎の理由』


「……ちょい愛奈、いい?」


放課後——。
廊下に一人でいた愛奈の背後から、私はこっそり話しかけた。
愛奈は驚いたように顔を上げ、私だと確認した後小さく笑みを浮かべた。


「ん? ……依麻、何?」
「ちょっと話したいことが……」
「……じゃあ、トイレ行こう」


愛奈は私の心情を察したのか、人気の少ない女子トイレを進めた。
私は頷き、黙って愛奈の後ろを歩く。


女子トイレは、察しの通り人が少なかった。
私と愛奈は鏡の前に立つ。
愛奈は指通りがよさそうな艶のある髪の毛を整える。
私はそれを横目で見ながら、壁に寄り掛かってうなだれた。


「……ね、愛奈」
「んー?」
「由良と優とまなさぁ……。私に対して明らかに怒ってるよね」


そこで、愛奈の手が止まった。


「……んー……、まぁ」
「やっぱそうだよね? 私、なんかしたかな?」
「んー……」


私は腕を組んで考える。
何もしてないつもりなんだけど——……。
一日という間に、一体何があったんだ。
私、本当に何かしたっけ——?
もしかしたら、知らないうちにウザイことしてたのかもしれない。
自覚ないだけで、何か酷い事を言ったのかもしれない。


そうだとすれば、皆に謝らなければ。
そう考え、俯いた顔を上げる。
その瞬間、


「っ!」


まなの顔が、視界いっぱいに広がった。
私は思わず壁にへばり付き、思いっきり警戒する。
び、びっくりした……!!


「……何してんの?」


まなは冷たい目で私を見ている。
私は壁から体を離し、まなの目から視線を逸らす。


「……なんでもないよ」


そしてとっさに出た一言が、これだった。


「……じゃ、早く一緒に帰るよ」
「え」


素っ気ない言葉で追い返すつもりだったが、まなの言葉が意外だった為に力が抜ける。
まなの目つきは鋭いままだけど、話しかけてくれた。
帰ろうって言ってくれた……?


「……どうしたのさ、二人ともー」


愛奈と私を見て、まなは笑いながらそういった。
会話の途中だったし、愛奈と話していたのはまな達の事だ。
それをわかってるのは愛奈と私だけで、お互いに顔を見合わせて固まっていた。
理由を、考えてるんだよ。
由良達が私に怒っている、理由を。


「もしかして……。由良と優の事?」
「え、」


私の心を読み取るように、まながそう言った。
エスパーですか、まなさん。
見透かされちゃ仕方ない、これ以上いい訳をするにも——。
言葉が、思いつかなかった。


「……まーうん、そう、だね」


私はぎこちない口調でそう返答する。
横に居た愛奈も苦笑い。
まなは私と愛奈を交互に見て、いつものような明るい口調でこう言った。


「なんか、依麻に怒ってるみたいだよ?」


そんなの、知ってる。
その理由が知りたいんだ、私は。


「詳しくは知らないけど……私、一応理由知ってるよ?」


またもや、心が読みとられた。
私って、やっぱ顔に出てるのかな……。
そう思うと、もう苦笑いを浮かべる事しかできなかった。


「……」


まなに聞くのは、少し抵抗があるけど——。
理由知らなきゃ何も始まらないし、このまま避けられっぱなしじゃ納得いかない。
私が無意識に二人を傷つけたなら、謝らなきゃいけないし……。


「……教えて」


まなにとりあえず、知ってることを教えてもらおう。


「——んじゃあ、外出よ? ……ここじゃ、ちょっと」


まなはそう言って、トイレから出る。
私は覚悟を決めて、まなの後をついて行った。