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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.644 )
日時: 2011/07/10 02:51
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: smQzDzj0)
参照: きみは一人で行くんだぜっ←

第百九十二話『避けたい理由』


ゆっくりゆっくり、確実に足を進める。
玄関を通り過ぎ、外に出ると一気に体が涼しくなった。


「……で、理由とは何でしょうか」


学校前で立ち止まり、私はまなに向かってそう言った。
まなは私の方に向き直り、ゆっくり口を開く。
その内容は、私にとってひどく残酷で。
出来れば願いたくなかった、避けていたあの考えだった。


「んーとねぇ……。
























           ——壱、のことだよ」



















ま た か
一気に嫌な悪寒が全身に伝わったと同時に、前の出来事を思い出した。
優たちと初めて喧嘩をした、あの秋の出来事。
あの時も壱の事が原因だった。
あの時は、全部私が悪かった。
色々考えて悩んで、今度こそもう二度と同じことは繰り返さないようにしようと思っていた。
誰も傷つかないようにと、誓った。


だけれど、今回は心辺りないし——。
そう思いながら頭を抱えて一生懸命考えていると、


『あの人のお母さん、まじ美人〜!』


学年レクが終わった後の、教室での由良の言葉が頭の中に響いた。
……もしかして、


「由良と優のどっちかが……。壱の事好きになった、とか?」


嫌な考えだけれど、十分あり得る事だ。
好きな人が被ったから、由良は私を避けてるのかもしれない——。


そう思ったが、


「違うよ」
「え」
「なんか、依麻が壱に対して積極的に動かないからみたいな事で怒ってるみたいだよ」
「……え」


まなの言葉が、胸に突き刺さる。
あの時の悪夢、再来。
積極的に動けないのは、そりゃあ自分でも腹立つ。
どうやったら積極的になれるんだろうとか、色々考えてるし悩んでる。
消極的だからクラスでも浮くし、友達なかなか出来ないし、好きな人に何も出来ないし——。
いいことの一つもない。


だけど、私は動けない
下手に動いたら、皆に何を思われるのか。
それが、怖かった。
また昔みたいな失敗を恐れていて前に進めない、臆病かもしれない。
それならば、それでも構わない。
だけど、自分でもこの弱さを改善したい。
もっと壱に近づきたいし、友達だって本当はもっと増やしたいし、クラスにだって馴染みたいと思う。


昔はこんな消極的じゃなかったのに——。
いつから、こんな性格になっちゃったんだろう。


仲直りしても『裏切らない』って約束しても、『一緒にいる』って約束しても。
もう、裏切られるのが怖い——。
もう、昔みたいな思いはしたくないのに——。


前と同じ出来事が起こる、なんてことは一番避けたかった。
避けたかったけれど、起きてしまった事はしょうがない。


様子を見て、場合によっては謝るか——。
ううん、消極的なだけで私は何も悪い事してない。
そうなればまた、話し合い——……しかないのかな。
でもなるべくめんどくさいことは、避けたい。




「……」


——どうすれば、いいんだろうか。


『誰も傷つかない方法』とか、何かいいものはないのだろうか。