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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.645 )
日時: 2011/07/10 03:25
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: smQzDzj0)
参照: きみは一人で行くんだぜっ←

第百九十三話『その事実、予感的中。』


一晩中、考えて考えて考えて。


頭が痛くなるくらいまで悩んでも、


結局は、何も思いつかなくて。




**


次の日の朝——。


「……あれ」


遅刻してきた私は、自分の靴箱を見て唖然とした。























             上靴が、ない。


















あらら、あらららら?
もしかして優と由良に隠された——?
二人は私の上靴の場所知ってるし……。
ていうか、すぐ見えるように踵側に『ミズキ』って名前を上靴に書いてあるので、隠そうと思えば誰でも隠せる。
……名前、書かなきゃよかった……。


「水城、何やってんだー」


玄関に居た先生がこちらを見てそう言う。
私はその先生を見て、ちょっと戸惑いがちに口を開いた。


「……う、上靴がないんです」
「上靴が?」


先生は少し驚いて私の靴箱を見る。
何度靴箱を見ても、そこは空っぽ。
朝一番のドッキリか。
なんて、頭の中で考えたりして。
このまま上靴がなければまた買い直さなきゃいけない。
私の家、食費ギリギリの貧乏なのになんちゅーこった。


そう考えると、次第に腹が立ってきた。


「——水城、ちょっとこの上靴見てみろ」
「え?」


先生に呼ばれ、一番下の靴箱を見る。
下の靴箱は使われてないので、空いているはずだが——……。
そこの一つに、爪先の向きに入っている靴箱があった。


「うっわ、取りにくっ!!」


狭い靴箱に爪先の向きでいれるなんて、どんだけだ。
爪先側だから誰のかわからないが、踵側を見れば一発で私のだってわかる。
私は無理矢理引っ張って取り出し、上靴を確認した。


「……私のだ!!」


私は上靴を持ったまま、叫んだ。
踵側には、ちゃんと“ミズキ”って書いてある。
間違いなく、正真正銘私のだ。
よかった、買い直すハメにならなくて——……。


「見つかったなら、早く教室に行きなさい。今何時だと思ってるんだ」
「あ、す、すいません」


先生に背中を押され、時計を見る。
もうすぐ一時間目が始まる時間になっていたので、私は慌てて教室へと向かった。


**


一時間目は体育なので、バッグを置いた私はすぐに体育館へと向かった。
体育館へ行くと愛奈が居たので、私は手を振りながら駆け寄る。


「おはよ、愛奈」
「おー、依麻おはよ。遅刻したのか〜」
「またやっちまいました」


私と愛奈は顔を見合わせて軽く笑った。
しかしすぐに愛奈の顔は険しくなり、途端に私の耳元に近づいてくる。
そして、ゆっくりと口を開く。


「……依麻。二人、依麻の事チラチラ見てるよ」
「!」


愛奈が、小声でこっそり教えてくれた。
二人っていうのは、由良と優の事だろう。
すぐに察した私は、複雑な気分になりながらも笑みを浮かべた。


「やっぱり?」
「うん。……一応、気を付けた方がいいよ?」
「わかった! 忠告ありがとうね」


愛奈にお礼を言い、体育の体形に並んだ。
上靴を隠されても、私は泣いたりしない。
悪口を言われても、そうですかで済ませればいい。


強気で、行かなきゃ。
相手の思い通りになんて、なるもんか。
例え悪いのが私だとしても、限度を超えればあっちの方が悪くなる。


だからいつか終わるまで、めげないで行こう。


**


体育の授業は、ダブルダッチ。
それぞれ女子の皆は、ペアの人達と楽しくダブルダッチをしていた。
だけど、私の所は——……。


「……」
「……依麻、顔死んでる」


由良×優、愛奈×私に別れていた。
そりゃあ顔も死ぬわ!!
ダブルダッチになんねー!


私と愛奈は縄跳びを持ち、茫然と突っ立っている。
ペアのはずの由良と優は、壁に寄り掛かって不良たちとこちらをチラチラ見ていた。
……なんなんだ、この重い空気は。


「……ねぇ優。あの人、変態なのかな——?」
「結構変態だよ、あいつ」


由良の言葉を冷やかすような口調で、優はそう言った。
すると横に居た不良たちは、すかさず由良と優の話に割り込んでくる。


「何さ由良、好きな人の話か!」
「由良の好きな人、誰ー?」


由良の好きな人——。
その単語はなんとなく嫌な予感がしたが、気にしない振りをした。
話の盛り上がり様から、もうダブルダッチは出来ないだろう。
仕方なく縄跳びを片付けようとした瞬間、




















            「珠紀壱でしょ?」




















「!?」


『好きな人』の話題に出てきたその名前に、私は硬直した。
心臓が、止まるかと思った。
……今、なんつった?


「——ちょ、優!! 水城に聞こえたらどうすんのさ!!」
「大丈夫だってー。聞こえないっしょ?」



バッチリ聞こえちゃってます、優さん。
嘘、嘘だ——……。
私は焦る心臓の音を、かき消すようにそう唱える。
だけど心臓の音は、どんどん大きくなるばかりで。
同時に、冷や汗が伝う感触がした。
一気に体の熱が、冷めていく。


「……っ、」


由良の新しい好きな人——。









             壱 な の !?













予感していたけど、当たってほしくなかった予感。
見事に、予感的中……。


その嫌な真実に、私はその場で立ち尽くしていた。