コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.654 )
- 日時: 2011/07/12 21:32
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: kG5vJqWm)
- 参照: 君の中に 堕ちていく
第百九十七話『亀裂』
今日は何だか、色々あった一日だった。
「愛奈〜、一緒に帰れる?」
大掃除も終わり、教室から出た私は愛奈に話しかけた。
愛奈は大きく頷き、笑みを浮かべる。
「いいよ〜。——……あ、でもまなも居るけど……大丈夫?」
「……あ、うん。大丈夫!」
大丈夫だろう、多分。
昨日普通の態度だったし、掃除の時に廊下歩いてたら手振ってくれたし——……。
そう思っていると、ちょうどまながやってきた。
「お、ナイスタイミング」
「……愛奈、帰ろ」
まなはバッグを持ち、愛奈に向かってそう言う。
何やら急いでるようだったので、私は慌てて口を開いた。
「まな、一緒に帰ってもいい?」
「知らないし。勝手にすれば」
まなから返ってきた返答は、予想以上に冷たいものであった。
……さすがに、イラッときた。
イラッとしちゃったよ、今。
「ちょ、まな……!」
愛奈は驚いた顔でまなを見る。
そりゃそうだろう。
いきなり私への態度が冷たくなっているのだから——。
それをこの時点で察した私は、同時に抑えきれないものが心の中に込み上げてきた。
思えば、この時でやめとけばよかったんだ。
ムキになんて、ならなければよかった。
そうすれば、こんなことにならなくてすんだのに——。
「……愛奈、やっぱ私一人で帰るわ」
イライラしていた私は、そう言い放って玄関に向かおうとした。
しかし、その動きを愛奈に止められる。
その私の態度を見ていたまなは表情が変わり、私に向かって睨んできた。
「二人で帰れば?」
まなもそう言い放ち、歩き出し始めた。
しかし、その動きも愛奈に止められる。
愛奈はまなに負けないくらいの鋭い目つきで、まなの腕を引っ張った。
「三人で帰ればいいのに、お前は何でそういう言い方すんのよ」
愛奈の口調が、怒っている。
元々サバサバとした口調の愛奈だが、今日はいつもと違った。
ピリピリモードが、こっちにまで伝わってくる。
「……っ私、言われたくないし!!」
「は?」
まなはそう叫び、思いっきり愛奈の手を振りほどいた。
愛奈は「何言ってんだコイツ」みたいな目でまなを見る。
私もまなを見ると、まなは鋭い目つきで私を睨んでいた。
——多分、まなが私と話したり仲良くしてるところを優が見たら怒って、今度は私じゃなくてまなが陰口言われる……って思ってんだろうね。
まぁ、そうなんだけどさ。
私と一緒に居たら、その子まで何か言われる。
……でも。
だからって、そんな言い方はないだろ。
「……あのさ。私一人でいいって言ってるし、私と一緒に居て色々言われるのが嫌なら、愛奈と二人で帰ればいいんじゃないの? 言いたいことあるなら言えば?」
私は真っ直ぐまなの方を見て、そう言った。
キレてはいないけど、少し強めの口調になってしまった。
……ついつい、カッとなった。
だけど、今まで波乱な出来事があった中で、ここまで相手にハッキリと言えたのは初めてかもしれない。
今までは、言いたくても言えない。
自分の考えを口に出来ない、泣くことしか出来ない弱虫だったから——。
「勝手に愛奈と二人で帰ればいいじゃん。何キレてんの」
まなは私を睨みつけたまま、そう強めの口調で言った。
その一言で、何かが一気に渦巻き始める。
愛奈は呆れたような顔で、私とまなを交互に見た。
「……あのなぁ、まな。依麻も少し落ち着
「キレてないし。勝手に逆ギレしてんのそっちでしょ。ふざけんなよ」
……あ。
勢いで、つい本音が。
心の中の本音が、ここまでポロッと口から出たことに驚きだった。
これはキレたも同然だよね、逆ギレしてるのは私だよね。
自分矛盾してるなぁ、と思いながらもまなを見た。
隣の愛奈は私の顔を見て、驚いている。
まなも「は?」と呟いて立ち尽くしていた。
そして、その一言&騒ぎに気付いた生徒が——……。
「——修羅場だ修羅場だ!!」
「何、女子同士?」
「誰と誰?」
「町上VS転校生だ」
教室から顔を出す人、廊下に居た人が私たちに注目した。
皆、こっちを指差して騒いでいる。
……めんどくさいことになりそう……。
ちょうどそう思った瞬間、
「——あれ、まな?」
ま さ か の 優 登 場
「優……っ」
まなは優を引っ張って、私の方を睨みながら何か呟いていた。
……くだらない。
そう思いながら心の中で小さく舌打ちをし、廊下や教室からのギャラリーの視線を無視して、愛奈の方を見た。
愛奈は少し呆れたような顔で、私を見る。
「めんどくさい事になりそう」
「……うん、ごめん」
「なんで依麻が謝るのさ」
まなと私の口論に巻き込んでしまったのに。
私がカッとならなければ、こんなことにならなかったかもしれないのに——。
愛奈は、優しい。