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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.655 )
日時: 2011/07/12 21:36
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: kG5vJqWm)
参照: 君の中に 堕ちていく

第百九十八話『悪夢再来』


そう思っていると、優が私達を睨みながらこう言った。


「お前等、いちいち細かい事でキレんなよ。亀裂いれるような事しないで」


その優の一言に、また抑えきれない気持ちとなった。
……亀裂?
亀裂起こしてんのは誰だよ。
私の事避けてるのは、どっち?
亀裂入れてんのは、どっち?
本音がどんどん溢れてくるが、ここは抑えて……。
私と愛奈は、順番にしっかりと意見を口にした。


「私は自分の意見、言っただけだから」
「私もさ、三人で帰ろうって言っただけなのに」
「だからー! それはまなが嫌なんだって」
「いや、だから私が一人で帰るから、愛奈とまなは二人で——」
「依麻」


溢れた言葉が爆発する前に、愛奈に止められた。
私は慌てて口を閉じ、愛奈を見る。
愛奈は小さく息をつき、優を見た。


「……何それ。大体、なんで依麻を一人にしようとするの?」


愛奈の鋭い口調に、優は黙る。
辺りに一気に沈黙が流れ始めた。


「……」


優と目が合ったと思いきや、すぐ逸らされ、優はゆっくりと口を開いて沈黙を破った。


「知らねぇよ、私にも」


優と由良が一番知ってる、くせに。
そう言おうと思ったが、これ以上めんどくさくさせる訳にもいかないので、心の中にしまっておいた。


「……もういい……。勝手に二人で帰ればいいじゃん!!」
「泣くなまな〜!!」


突然廊下中に響く声で叫び、まなは泣き出した。
それを優しく包み込むように、優はまなを抱きしめる。
そして鋭い目つきで私を睨み、


「まなの気持ち、考えなよ」


私と愛奈に向かって、そう言った。
私の気持ちは無視ですか。
そりゃあ、まなの気持ちも大事だと思うけどさ。
私も私なりに考えて『二人で帰りな』って進めてる訳だし、愛奈も私たちの事を考えて『三人で一緒に帰ろう』って言ってるのにさ——。
それを拒絶してるのは、まなじゃん。


この時、どんだけ自分が嫌われてるのかがわかった。
途端に、悲しみがこみ上げてきた。
こみ上げてくる怒りと悲しいがごちゃまぜにされて、なんだか泣きそうになる。


「——とりあえず、玄関行くべ」


俯いて必死で感情を抑えていると、優がまとめるようにそう言った。
玄関で、何をされるのか。
今度こそ、本当にめんどくさいことになるかもしれない。


色んな感情と思考が混ざり合い、頭の中はパンク寸前だった。

**


玄関につき、外の冷たい空気が辺りを包んだ。
まだ、三月。——もう、三月。
季節が過ぎるのって、あっという間だよね。


「……」


私達の周りでは沈黙が流れる。
外からは運動部の賑やかの声が聞こえてくる為、少しだけ変な感じがした。


「——喧嘩してたよね?」


俯いたまま過ごしていると、野球部軍団がやってきた。
まなと同じクラスの男子と、健吾。
ユニフォームを着て、片手にはグローブ。
もう片方の空いている手で、まなに向かって指を差していた。


「お前、そんな小さいことで怒るなって」
「怒ってないし」


まなはいつもの口調とは違う、冷たい口調でそう言い放った。
野球部の男子は少し眉を下げ、首を傾ける。
すると、


「ねぇ、水城って変態? 純粋?」


突然、私の方に健吾が近づいてきた。
な、なんか関係ない質問が……。
しかも何それ、変態に純粋って。
そう言えば前、健吾が言ってたっけ。
『クラスで純粋な女性の例は、優香!』なんて。
やっぱ男子から見ても、優香ちゃんは純粋で綺麗な女の子……なのかな。
健吾の目でそう映ってるって事は、壱の目にもそんな風に映っているのかな?


なんだか、そう思うとイライラしてきた。
イライラ、再発。


「そんなの私にも知らないよ。自分でわかるわけないじゃん」


ヤキモチと優とまなに対しての怒りが混ざり、健吾に少し当たってしまった。
……ごめん、健吾。
言ってしまった後に心の中で謝ったが、健吾は気にしない様子で。
私をスルーして、またまなの方に近づいて行った。


「ねぇまな、この人純粋?」
「知らないし」


まなにも冷たくあしらわれ、野球部はお手上げ状態で去って行った。
野球部は野球部なりに私達の中を元通りにしようとしてくれたのかもしれないが——……。
余計、まなの不機嫌な態度はパワーアップした。


「結局どうすんの!? めんどくせぇ奴らだな」


優のイライラもどんどんパワーアップしているのか、優は強い口調で言った。
一番めんどくさいのは、汚い手をつかってる優だと思う。


そう思う私は、おかしいのかな——?


「……ばいばい」


そしてとうとう、まなはキレて帰りだした。
優は慌ててまなを追いかけようとしたが、すぐに足を止めて私と愛奈を見る。


……やっぱ、私と一緒にいる愛奈も巻き込まれちゃうし、迷惑かけちゃう。
愛奈まで、私みたいに悪口言われちゃう。
急にそんな不安に襲われ、私は愛奈の背中を軽く押した。


「……愛奈、私は大丈夫だから。まな、追いかけなよ」


笑顔を作ってみたけど、ぎこちなかったかもしれない。
だけれど、これが精一杯だ。
今ならまなを追いかければ、間に合う。
早く、早く行って——……。


「……いいよ。一緒に帰ろう」


愛奈はゆっくりと首を横に振り、優しい声と笑顔でそう言ってくれた。
まなと愛奈の方が、友達歴が長いのに。
それなのに、友達歴が一年も経ってない私を選んでくれた。
嬉しくて、涙が出そうになった。


「……あーあ、まな可哀想」


そのやり取りを見た優が、私を睨みながら嫌味ったらしくそう言った。
——本当、腹立った。
殴ってやろうかと思うくらい。
それと同時に、すごく悲しかった。
私のせいで愛奈も巻き込んじゃったし。


また、同じことの繰り返しだ。
何やってんだ、私。
友達にも迷惑かけて、
また喧嘩して、
何度も同じこと繰り返して。


「……依麻、とりあえず帰ろう?」
「……うん」


愛奈は優しく私の腕を掴んだ。
……友達だけじゃない。
また、壱にも迷惑かけてたら——?


そう考えたら、すごく怖くなった。