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Re: *叶恋華* +実話+ ( No.71 )
日時: 2011/01/30 02:55
名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uzwOA3TN)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

第十四話『好きな所』


水城依麻、十四歳。


只今、絶賛片想い中?





今日は、アイマスク福祉体験の日だった。
出席番号順で並び、二人一組でペアを作った。
私は転校生なので出席番号の最後だった。
……まぁ、水城で「み」だからあまり変わらないんだけどさ。
私のペアは、優だったので安心した。


「じゃあ女子と男子二列で座れよ〜」


福野がそう言い、皆並んで座った。
その際に、斜め後ろに叶汰がいた。
……というか私の横にいる叶汰。
なんか、前に来過ぎな気が……。


「もう少し詰めろ」


福野がそう言い、皆全体的に詰めた。
うがゃああっ!
叶汰が近っ……!
か、顔が、イケメンがっ……!
すぐ横にいるから、なんか視線が……っ!
私の頭の中は、ドキドキでいっぱいだった。


その時、なんか足がもぞもぞし始めた。
……む? なんじゃ?
そう思いながら横を見ると、叶汰が私のポケットにはさんでいたピンをズボンの裾につけていた。


「うぇぇっ!?」


思わず変な声を出してしまった。
そして叶汰の顔を見る。


「これつけたしょ!?」
「つけてないし」


叶汰は笑いながら言った。
そして後ろにいた男子に指を指し、


「俺じゃなくて、こいつ」
「はぁ?」
「いや、俺じゃなくて叶汰」


人のせいにし始めたが、バレバレ。
私は叶汰を見て、笑みを浮かべた。
あぁ、少しでも会話ができたのが嬉しい……。
私の心は、一気に暖かくなった。


その瞬間もつかの間。
叶汰が横を向いた際に、私の斜め前にいた由良が叶汰のほっぺにデコピンをした。
それに叶汰は笑いながら、私と由良を見た。


「お前らいい加減にしろよー、どっちだ」
「俺見てたけど、右のばあさん由良がやったよ」
「なに!? おい、由良!!」


すぐに二人の世界が始まった。
私はその二人の光景を見ながら、手に持っているアイマスクを振り回していた。


**


さて、やってきました放課後活動。
貼り絵作業の私たちは、細かい作業にだんだん飽きていました。
そんな時由良が、画用紙を見つめながら呟いた。


「シュレッター使いたい」
「me too。わかる」
「おい、わかっちゃだめだろそれ」


私の言葉に、叶汰が鋭くツッコミを入れた。
それがなんだか嬉しくて、私は思わず画用紙を散らかしてしまった。
それを見た由良が目を点にしたのは、言うまでもない。




「……ねぇ、叶汰前髪伸びてるよね」


作業に飽きた、雑談タイム。
由良がぽつりとそう言った。
そう、叶汰の前髪は伸びている。
かっこよく斜めになっていて、叶汰に似合ってると思う。


「私も中一の途中まで前髪長かったよー」


私もすかさず、二人の会話に入った。
すると叶汰が、少し驚きながら私を見た。


「え、今も長いんじゃないの? その前髪」


叶汰が指差したのは、私の後れ毛?だ。
それを前髪と勘違いした叶汰は、私にそう言った。
まぁ、前髪に似てるけどさぁ……。


「これは違うよ、前髪じゃなくて、えーと……」
「触覚?」
「触覚って、おい! 違うし」


叶汰の回答に、私は笑いながらツッコんだ。
笑みを浮かべていると、叶汰がチラチラこっちを見てる気がした。


「……」


気のせい、か。
私が叶汰をチラチラ見てるだけだよね。
私はそう思いながら、また画用紙に視線を移した。




「由良がカ○カ○ルンルンで〜、叶汰が食パ○マン!」


しばらくすると、由良が突然そう言い出した。
そ、それはア○パ○マンでは……?
そう思いながら、由良の会話を聞いていた。


「……バ○子さん誰にしようかな」
「ん」


由良がバ○子さんを誰にしようかと悩んでいるとき、叶汰が私を指差してきた。
私は思わず目を見開き、叶汰を見る。


「は、な、なんで!?」
「バ○子さんに似てるから」
「えー? 依麻はア○パ○マンに似てるし」


バ、バ○子さん……。
っておい、由良まで……!!
丸顔なの気にしてるんだぞ、うわぁぁぁぁぁ!!!


そう思いながら叶汰の顔を見ると、サラサラの暗め茶髪の髪にちぎれた画用紙がついていた。


「叶汰、画用紙ついてるよ」
「え?」


由良がそういうと、叶汰は髪の毛を触って画用紙を落とし始めた。
画用紙はひらりと落ち、叶汰のジャージの上に乗っかった。


「とれたー」
「お前らやめろよー」
「は? つけたの由良じゃないよ」
「じゃあ誰よ。……」


叶汰が由良から視線を外し、私を見てきた。
うわぁ、イケメンイケメンイケメン!?
私の頭は、爆発寸前だった。


「ち、違うよ!? 私じゃない!」
「私でも依麻でもないよ。叶汰の手にくっついたやつがついたんだよ」


由良が付け加えるように、そう言ってくれた。
すると、叶汰は軽く笑みを浮かべて「そっか」と呟く。


君の好きなとこ——。
私が話に入ってなくても、由良と叶汰が話していても。
『お前ら』って私も入れてくれるとこ。
そんな些細な事だけど、凄く嬉しかった。






私の中で、気づかぬうちに心の変化が起きてるとは知らずに——。