コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.73 )
- 日時: 2011/01/30 03:49
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uzwOA3TN)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
第十五話『恋愛定義』
十月!!
本格的の、秋です。
やっと寒くなってきました。
そんな中、今日は制服登校。
秋に突入ってことで、今日から冬服!
なので丁度いい体温だ。
夏服やジャージで見慣れた教室も、なんか今日は新鮮。
……うん、イケメン達の学ラン最高。
特に珠紀壱君!!
やばいよ、鼻血出ますよ私。
乱した学ランに赤いTシャツ、赤いベルトってどういうことですか!
超ドストライクなんですが!!
そう、最近私は珠紀壱を目で追うようになっていた。
私は目が悪いし男子の顔覗き込まないし、ずっと珠紀壱の席が見えない位置だったから、最近初めて顔がわかるようになったんだけど——。
その整った顔……多分、クラスの中でもかっこいい分類の叶汰を抜いて、一番かっこいいと思う。
そして、この前——。
そう、壱の存在をよく知らなかった時。
壱が体調を崩して早退したときがあった。
保健室から帰ってきて帰る準備をしていた壱に、学級代表の優香ちゃんとかおんは壱に向かってこう言った。
『大丈夫?』
二人は心配そうな顔で、そう呟いた。
その時の壱は顔が見えなかったが、歩きながら二人に背を向けて、
『……ん』
と、少し照れたように呟いたのだ。
その時のシャイでクールな雰囲気に、私は思わず見とれてしまっていた。
「……」
叶汰はといえば……。
はぅっ、赤いTシャツ!
ただきちんと制服着てるのが少々残念……。
って私、変態か。
「ははっ」
壱の方に視線を変えると、壱は男子と話していた。
男子と話している壱の笑顔。
なんだか、いつもは見れない可愛い笑顔。
——なんだか、少しだけ私は。
ほんの少しだけ、ドキドキしていた。
*放課後*
「依麻、ここ座れば」
放課後活動。
席に座るときに、由良がそう呟いた。
見れば、由良が指差してるのは叶汰の横。
「……」
「……依麻、座らないの〜?」
「……あ、や、うん!」
沈黙の末、私は曖昧に頷いていつもの場所に座った。
いつもの場所……といっても、結局叶汰の横なのだが。
「叶汰の家さぁ、広いよねぇ」
「そうか?」
今日は新聞作業の優までこっちのグループに来て、話に交わっていた。
すると由良も、笑みを浮かべながら叶汰を見た。
「私、叶汰の家のリビングまでしかいったことないよ。優凄いね〜」
「そう? なんかめっちゃ広かったよ」
「そんなことないって」
叶汰と由良と優の幼馴染三人は、笑顔を浮かべながら会話に華を咲かせていた。
そんな三人が羨ましくて、
「いいなぁ〜……」
気が付けば、口を開いていた。
しかし私が呟いた瞬間、一気に空気が固まった。
……ぬ? なんかこれ誤解された!?
「リビングにしか言ったことないのが、いいの?」
「いっ? いやっ!? 広いのが羨ましいってこと!」
「あぁ……」
私が慌ててそう笑うと、叶汰も軽く笑ってくれた。
私は少しほっとして、また作業に取り掛かった。
**
しばらくして。
私と由良と優と叶汰は、何故か声の話になった。
「由良の声ってどんな声?」
「ん〜……。なんか、高すぎず低すぎずって声かな? 私の声は?」
「依麻の声ねぇ〜……、アメリカの外国人が覚えたての日本語喋ってる声」
どんな声だ、それは。
外国人に失礼だろ。
「……由良、それどんな声?」
「なんかねぇ〜」
「ワターシエマ・ミズキデース」
由良の言葉に付け加えるように、横にいた叶汰がそう言い始めた。
その見事なカタコトぶり&滑舌の悪さに、私は少し茫然としていた。
周りから聞いたら、私はこんな感じなのか……。
「私滑舌悪いって言われるし……」
何回も「ん?」って聞き返されるし。
やっぱそうなのか……。
皆さん、聞きづらくてすみません。
すると再び叶汰が横から、
「わはひかふふぇふわふいっふぇひはへふ」
えぇぇぇぇ。
そんなに重症なのか、私の滑舌の悪さは。
あ、なんか虚しくて泣きそうになってきた。
「そ、そんなに滑舌悪い?」
「うん」
即答。
水城依麻、ほんの少しだけ心に傷を負った十四歳の秋。
**
今日の分の作業が終わり、後片付けの時間。
一応貼り絵の作業リーダーである叶汰は、皆をまとめていた。
「由良、明日朝来れる?」
「うん、来れる」
叶汰は由良に明日朝準備出来るかを聞いていた。
由良はにっこりとほほ笑み、頷いた。
すると今度は、叶汰は私の方を向く。
「明日来れる?」
「え? うん。忘れなければ」
「てか来い」
……え?
今、心臓ハンパないくらいドキッとしたよ。
『てか来い』って、普通の意味だよね、うん。
朝遅れるなって意味、だよね?
期待するな、私。
私は心臓のドキドキを抑え、片づけを早く終わらせて由良と一緒に玄関へ向かった。
**
外に出て由良と歩いていると、不意に恋バナの話になった。
帰り道の恋バナは、由良とは必須の会話。
私は、由良のする恋バナは叶汰の事だとわかっていたから。
何も言わず、由良の話を聞いていた。
しかし、
「……私さぁ、叶汰より先輩のほうが好き」
「え?」
由良の答えは、私の想像を超えるものであった。
せ、先輩……だと?
「きょ、叶汰は?」
「叶汰はもう、どうでもいい」
ど う で も い い !?
「さっき、手紙拾うときに手握っちゃってさ……」
「え、で? 相手の反応は?」
「『……!?』って感じだったからやだ。もういい。あいつとは幼馴染。ただの友達でいいんだ」
由良はそう呟いて、笑みを浮かべる。
私は驚いた表情で、由良を見つめていた。
「私、今度から先輩との恋を頑張るから! 応援してね」
由良の笑顔は、なんだかすがすがしそうなものだった。
——そんなので、簡単に恋心は捨てれるのかな?
『好き』っていうのは、本気じゃないの?
『恋愛』はさ、本気じゃなきゃできないんじゃないの?
そんな簡単に恋心を放棄出来るなんて。
それでいいの? 由良——。
私の心の中には、何故かぽっかりと穴が開いたような気持ちになった。