コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.74 )
- 日時: 2011/01/30 04:18
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uzwOA3TN)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
第十六話『芽生えゆく感情』
次の日の家庭科。
今日はミシンでバックを作っていた。
私は優と一緒の班でもあり、不良と一緒の班でもあった。
なるべく不良とは関わらないようにしていたし、大人しくしていた。
しかし、今日は——。
「おい宮田、これやって」
「やだ」
「お願い、やれ」
「無理」
「——じゃあ水城さん、お願い」
……え?
私の思考回路は、一気に停止した。
——そう。
今日は、不良から話を吹っ掛けられてしまったのだ。
なんか、他の不良たちまでこっち見てるよーあひょ。
てか、なぜにさん付け?
なんか怖いよ、あぁそんな目で見ないで。
「な、なんで」
「だって出来ないんだもん。やってください」
そう言って不良——吉澤敦紀は、ガン見してきた。
……う、そ、そんな目で見るなよ!
怖ぇじゃねぇかぁぁぁ!
「……わ、わかった……」
わかりましたよ、やりゃあいいんだろ!?
ひぃ、怖いよ帰りたいよー。
「わぁ、ありがとう! さすが水城さん。宮田みたいなのとは違うわ」
「悪かったね」
吉澤は笑みを浮かべそういうと、横から優が睨みながら言い放った。
な、なんか不良が満面の笑みを浮かべているんですが……。
な、なんか意外に可愛い……かも。
ていうか、どうせやるならあらかじめ言っておこう。
私に頼むからには——。
「失敗しても、し、知らないよ? その時はごめん」
「あー、別にいいよ」
「自分の作業終わってからやるから」
「うぃ」
……ん?
な、なんか思ってた想像と違う……なぁ。
この人、顔怖いけどね。
中二に見えないんだけどね。
そう思いながらも、まず自分の作業を進めた。
すると吉澤は、腕を組んで足を組んで偉そうな体制で私を見てきた。
「ねぇ、前の学校なんてとこだっけ」
「刹中。刹那中学校」
「なにそれ、そんなとこあんの」
「あるよ」
吉澤は私に対して会話を投げかけるが、私はなかなか目を合わせることが出来ずに下を向いていた。
だって、なんか、目が怖いんですもの。
「前の学校で彼氏居た?」
「居ない」
即答できるのが、悲しいとこだよね。うん。
彼氏ほしいけど、両想いになれねーんだよバーッキャロー!
「え? 一回も?」
「うん」
あぁ、一回もだよ。
十四年間彼氏いねぇよ。
……あ、なんか虚しくなってきた。
**
しばらく経った後。
もう大分時間は過ぎていて、授業があと数分で終わる時間になっていた。
「——もう終わるじゃん、約束破ったなー」
吉澤がそう言って私を見た。
約束なんかしてましたか、私とあなた。
てかせっかちだなぁ……。
む、私がノロいだけ?
とにかく、早くやれってことか。
「ちょ、わかったよ。今暇だからやってあげる。貸して」
「いぇーい」
暇じゃないけどね、これからミシン縫うとこだったんだけどな。
……まぁいいか。
「……やべ」
慌てて吉澤の作業をしたから、布ガタガタ。
折りたたんだら、長さ合わないじゃん!
あぁぁ、やべぇぇぇ!
と、とりあえずチャイム鳴るから印付けしなきゃ……!
「……で、出来たよ。——あのぉ、ほんの少し失敗しましたが……」
「お、別にいいよ。ありがとー」
よかった、心が広いじゃないか。
ボコられるかと思った。マジで。
うん、顔が怖いからね。
「いやぁ、マジで助かったわ。ありがとう」
「あ、うん。いえいえ」
なんか、ここまで感謝されるとは……。
失敗したのに、なんだか申し訳ない。
「次回もよろしく」
「え。ミシンくらい出来るでしょ?」
「無理ー。やって」
自分でやれ!といいたいとこだが、あんなにお礼言われたしね。
うん、仕方がない。
「……仕方ない、わかったよ」
「まじ?ありがとー」
不良って、こんなお礼言うもんなの?
そう疑問に思ったとこで、授業が終わった。
**
あぁ、珠紀壱かっこいい……。
休み時間、私は頬杖をつきながら壱を見ていた。
なんだか最近、壱を目で追う回数が増えた気がする。
なんでだろう、何やってるんだろ私。
存在をアピールするため、目を合わせようと必死な自分がいる。
「……!」
やった、今目が合った気がする!
……って、あれ?
私が好きなのは、叶汰だよね?
なんで——。
なんで、壱と目が合ったからってこんなに喜んでるの?
なんで、壱を目で追っちゃうの——?
私はまだ、この時の自分の心の中に芽生えていた感情に気が付いていなかった。