コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *叶恋華* +実話+ ( No.75 )
- 日時: 2011/01/30 04:39
- 名前: 絵磨 ◆VRtMSlYWsU (ID: uzwOA3TN)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
第十七話『暖かい気持ち』
「てかうちらさぁ、バンドじゃなくなったよね。由良がキーボードで、ボーカルが優と愛奈。トライアングル依麻。依麻一人でやるんだよ」
放課後活動の時間、由良が叶汰に突然告げた。
いつの間にか、トライアングルになっている私。
いくら楽器が出来ないからって……何故トライアングルに。
あぁ、なんか恥ずかしいじゃないか。
絶対叶汰に笑われる。
と思いきや、
「え、それって可哀相じゃん」
……え?
「違うのやらせてあげろよ」
「……でも依麻楽器できないっていうから……」
「一人でトライアングルとか、虚しいべ」
叶汰は、そう言って私を見た。
思わず胸が高鳴って。
そのさりげない優しさに、泣きそうになった。
「……じゃあ考えとく。——話変わるけど叶汰、依麻暇そうだからさ。依麻に何か仕事わけてあげて」
由良は画用紙をちぎりながら、そう呟いた。
確かに今、私は仕事がなくて暇だ。
叶汰は、小さく唸りながら辺りを見回した。
「んーとね……。じゃあ、ここの貼り絵」
「わかった」
「じゃあ、ここ来て」
叶汰がそう言い、空いてる席を差した。
な、なんかドキドキする。
私は緊張気味に座ったあと、叶汰が隣に座ってきた。
それのお陰で、更に緊張して私の思考回路は吹っ飛んでしまった。
恐るべし、坂上叶汰パワー。
**
「ムン君、行くよ〜」
学校祭準備途中、PRビデオを作るというわけで……。
私たちのクラスは、紙に書いたム○クの叫びの顔やひょっとこの顔、そしておかめのお面などを作り、クラス全体が盛り上がっていた。
そんな中、ムン君と名付けられたム○クのお面をつけるのは叶汰。
大分使い古されたムン君を見て、私は叶汰に向かって呟いた。
「だいぶしわしわになってきたね」
「大便したくなってきた?」
「はぁ!?」
叶汰の聞き間違えに、一同大爆笑。
私は慌てて、首を横に振った。
「そんなこといってないし!!」
「言わなかった?」
叶汰はそう言って笑顔を浮かべた。
うっ……笑顔が眩しい。
「み……っ、耳おかしいんじゃないの?」
私がそう言って叶汰から視線を外すと、叶汰は軽く笑みを浮かべて撮影準備をしに行った。
あぁ……緊張した。
私はその場で伸びをして、教室を見渡す。
学校祭撮影、教室にも来るよね。
そう思っていると、カメラを持った福野とお面を被ったクラスの人達が一斉に教室に入ってきた。
その姿を見たクラスメートは、皆大爆笑。
「学年貼り絵代表の、坂上叶汰です。僕たちは——」
まずはムン君をつけていな叶汰が、貼り絵紹介をした。
その際に、ムン君とひょっとこ太郎をつけた二人が変な踊りをしてカメラに収まっていた。
——そんなお面の役をしているのは。
男子学級委員長の山城千春と、百江、叶汰と……。
かおんの彼氏の新だった。
「サイゴハカベシンブンデス」
変な声で進行をする不良の一人、堀巻健吾。
叶汰……ムン君と、新のひょっとこ太郎は左右に揺れていた。
教室はもう、爆笑の渦に包まれていた。
「——よしっ! 撮影完了!!」
「先生ーっ、ちょっと見せてー」
福野がビデオカメラを持ち替え、皆に向かって見せた。
皆はビデオカメラを覗くように囲んだ。
私も人に押されながら覗きに行くと、隣に叶汰が入り込んで来た。
うっわ、近っっ!
すぐ隣、ぐはぁっ!
「……っ」
叶汰いい匂いする……っ!
てか、叶汰の腕当たってるぅぅぅ!
しかもせまいから、叶汰のジャージに私のほっぺが当たってしまってる……! ぎゃひ!!
しかも叶汰のほうがでかいから、ちょびっと身長差が……。
皆前にのめり込んでるから、画面見えないっす。
……でも、まぁいいや。
叶汰の隣で、居られるなら。
私はそう思いながら、少しだけの幸せの空間を味わっていた。
**
「お疲れ〜」
撮影終了。
叶汰は役目を終えて、小さく息を吐きながら隣に座った。
私は思わず叶汰に視線を移す。
その時、叶汰は私を見ずに違うものを見た。
「……あれ、眼鏡?」
「え? あ、うん」
そう、叶汰が視界に入れたのは私の眼鏡。
私の目は最高に悪いので、何かするときは眼鏡必須だ。
「持ってたんだ。普段かけてなくない?」
「うん。授業中だけかけてるからね」
「かけてたっけ?」
「かけてたよ」
私が笑いながら言うと、叶汰も笑みを浮かべてくれた。
そんな優しい叶汰に、私は心のどこかが暖かく感じた。