コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 指先女子高生⌒Y⌒∮* ※いめそん(仮) ( No.16 )
日時: 2011/02/03 14:20
名前: 愛芽 ◆NqnIZqOf5M (ID: CFE7lDA5)

@04/.*


「おはよー」

あの騒動から一夜明けた今日、私は2日ぶりに学校へ登校した。

「あ、未奈美、さっき平村先生が呼んでたよ〜」

教室に入るなり、分厚い日誌を持ったクラスメイトが
教えてくれた。多分、今日の日直。

「あ、そうなんだ、ありがとっ」

私は心の中でその子に『お疲れ様です』と呟きながら、
1階の職員室へと向かった。



「失礼しまぁす」

朝早いせいか、職員室には1人しかいなかった。

「おぉ、綾城か。体調はどうかね」

うちの担任の平村先生は、もうじき還暦を迎える。
生徒からの評判は良く、自分達の話をわかってくれる自慢の先生だ。

「もう大丈夫ですっ!頭の痛みも大分マシになりました!」

私は思わず敬礼のポーズをとる。

「そーかそーか。そりゃよかった」

先生はククッと嬉しそうに笑うと、
事務イスを私の向きへ回転させた。

「なら、ちょっと頼まれてくれないか?」

「えっ、私にですか?」

本当は、なんで私になんですか、と訪ねたかったけれど、
平村先生には日ごろからいろいろ恩恵があるし、
あえてやめた。

先生は私よりずっと背の高い棚を指差し、こう言った。

「あの棚の上の資料を、体育館まで持ってきて欲しいんだ」

「えぇ…」

ざっと見たところ、2メートルは軽くありそうだ。
戸棚に埋め込まれたガラス窓からは、いくつのもティーカップが
所狭しと並んでいる。

「では、私はこれを運ぶからね」

先生はよいしょ、と足元にあった大きな段ボールを持ちあげた。
某コーヒーメーカーのロゴが入っている。

「運んだら、教室に戻ってくれていいから」

先生はそれだけ言うと、さっさと出て行ってしまった。


…仕方ない、やるか。



そうは言ったものの、まるで大きな壁。
背伸びをしても、ジャンプをしても、届かない。

棚と格闘し、はや3分。
行き詰ったその時、私はハッと思い出した。


「確かこの間、病室でもこんなことがあったよーな…」


あの時は、頭の中で強く念じると窓があいたんだっけ。


…よし、一か八か。
正直、ちょっとバカらしい気もした。まるで戦隊ヒーローに憧れる
幼い子供のようで。

それでも私は右手の人差指に全神経を集中させた。
目をつぶり、視界を真っ暗にさせる。





《オチロ、オチロ、オチロ—…!!》






するとどうだろう。
音一つ立てず、すべての資料が私の手に吸いつくようにして
落ちてきたではないか!

私は慌てて落ちてきた資料を胸で抱え、呆然と立ち尽くしていた。
ここで初めて気づく。









これは…



これはもしかして









…一種のエスパー能力!?







もちろん、はたまた偶然という可能性も無きにしも非ず。
けれども2回目となると、やはりその可能性が高い気がする。

私は、手当たりしだいモノを動かしてみることにした。


コーヒーカップを持ってみたり。
イスをひいてみたり。

言葉だけで書くと地味に聴こえるが、一切手は触れていない。


「私—…どうしちゃったの〜っ!?」


もちろん、思い当たる節はある。

            —あの事故かもしれない。そう思った。


「でも、何のタイミングで…」

私はハッとした。

「もしかして、地面に叩きつけられたときに…?」

あの時、辺りは全て闇に包まれていた。
人の声はぼやがかかって聴こえ、まして目なんて開くはずもなく。








  ある科学者は言っていた





  エスパーなんて存在しないと—…




「…すごい」


不意に言葉がこぼれる。
心からの素直な感想だった。


「私、エスパー女子高生になっちゃった…!!」

思わず右手の人差指を見つめる。
キラキラと光る電光が指の周りを渦巻いていた。

しっかりと抱えられていた紙の束は頼りなく腕からスルスルと抜け出し、
私の足元を囲んだ。

「…って、資料!」

頼まれたことは最後までやりとおす—
これは私の唯一のプライドでもある。

私は我に返ると、ものすごいスピードで紙を拾いなおし、凍える廊下を走り抜けた。


「この日私は




世界で一人の“エスパー女子高生”に…いや、






世界でたった一人の—…










“指先女子高生”になったっ!!」