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Re: 指先女子高生⌒Y⌒∮*※参照400突破!! ( No.68 )
日時: 2011/03/20 14:57
名前: 愛芽 ◆NqnIZqOf5M (ID: CFE7lDA5)

♯03/.* 


「いってきます」

2月の空気は身が凍るほど冷たく、吐くと白い息が出てくる程だった。



「あれっ!もしかして日向陽歌?」

急に背後から声がした。
私の体が過敏に反応し、カタカタと震えだす。

もしかして、もしかして——…



「あ……ひ、柊…那美さん…」

「やっぱし!!あんた此処にいたんだ〜」






あれは中学時代の事だった—…。





























『ひゃははははははははっ!!!!』

毎日のように浴びせられる大量の水と罵声。
毎日のように傷ついていく心—…。

『…っ!』

『濡れちゃったねー。拭いてあげよっかあ♪』

『ちょっと那美、それもう何日も洗ってないモップじゃんww』

『ごめんなさいっ、ごめんなさいっ…!!!』

理由もなく謝り続ける私。
先生に報告する生徒など一人もいなかった。
柊さんのお父さんは土地の権力者で、地域を牛耳っていたから。
誰も逆らえなかったのだろう。クラス中が私の敵だった。

とうとう私は耐え切れなくなり、遠い遠いココへ引っ越してきたというのに…。






「何で…ここに?」

喉から声を絞り出し、後ずさりしたい気持ちを抑えながら尋ねる。
柊さんはニヤッと薄気味悪い笑みをうかべ、私の胸に抱かれている“モノ”を奪い取った。

「あっ!」

「ふーん、あんたマフィン…あ、そっかあ、今日バレンタインなんだっけ♪」

「返して下さいっ…!!!」

私は柊さんの手首を強くつかんだ。

「痛っ…何すんのよっ!」

柊さんが私の手をきつく払いのけた反動で、その“モノ”が地面にたたきつけられてしまった。

「あっ……」

私が拾おうとしたとき、黒い影が伸びてきた。




グシャッ!




「どーせクソマズイんでしょ?髪型だってさあ…ブスは何したって変わんねえんだよっ!」




柊さんはおまけに、とでも言いたげに飲みかけの缶ジュースを頭の上からぶっかけてきた。

「それと一緒に、コレも捨てといてッ☆」

中身が空になった缶を私に思い切り投げつけると、柊さんは姿を消した。






「う…っ…あ…」


言い返せない自分が憎い。悲しくて。悔しくて。



したたったジュースの雫と涙が入り混じり、踏みつぶされたマフィンに落ちた。


「どうして…」


私はよろよろと立ちあがると、原形をとどめていないマフィンをカバンの中に入れ、おぼつかない足取りで学校へと向かった。


マフィンの力がなくても、メイクの力がなくても。
私、あきらめない。





もう、後戻りなんてできないよ————…。