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- Re: ラナンキュラス* 【短編集】 ( No.48 )
- 日時: 2011/03/21 21:42
- 名前: ラズリ ◆ARy56H7Y/M (ID: fsu3Q4nP)
「優しいあの子は」
小さいころの話——
まだ私が幼稚園にかよっていた時のこと。
交通事故で両親を亡くし、私はずっと泣いていた。
ある日の事だ。
家のまどをたたく音がした。
カーテンを開けるとそこに、そのころの私より
少し年上くらいの少女が立っていた。
「だあれ?」
その子は笑って言った。
「近所に住んでるの。君も独りなんでしょう?
一緒に遊ぼう。」
そのころの私は、深く考えずに「いいよ」と言った。
私とその子は、ずっと遊んでいた。
太陽が沈みかける時に、その子と約束した。
「また明日、遊ぼうね。」
次の日もその女の子はやってきた。
「今度は花畑行こうよ。すごく綺麗だよ。」
「うん。行く。」
「そういえば、名前聞いてなかったね。なんていうの?」
「私?私はね、美奈っていうんだよ。」
「じゃあ、今度から、美奈って呼ぶね。」
そんな話をしながら、
私とその子は、花畑に行った。
すごく、すごく綺麗だった。
「美奈。これ、あげる!」
その子は私の頭にシロツメクサの花冠をかぶせてくれた。
「わあ!ありがとう!」
楽しい時間はあっというまに過ぎ、太陽が沈みかけるときになった。
私とあの子は昨日と同じように約束をして帰った。
その時からだろうか。
妙な違和感を感じるようになったのは。
次の日も、その次の日も、その子はやってきて、
私にいろいろなものを教えてくれた。
ある時、私は尋ねた。
どこからきたのかを。
最初に出会った時には、「近所に住んでいる」と言っていたけど、思い返してみればあんな子はいなかった。
私がどんなに尋ねても、その子はただ、笑っているだけだった。
やがて、私は一年生になった。
私は友達が沢山できた。
毎日が楽しかった。
私はそのことをあの子に話した。
すると、あの子はいつもの様に笑っていった。
「よかったね。美奈。」
その日以来、その少女の姿を見る事はなかった。
後で、その事を叔母さんに話すと、
「それは、寂しそうにしてる美奈を、元気づけようとしてくれたんだよ。」
そういった。
聞いてみて、分かった。
この町にある大きな木。
そこに宿ってるものは、寂しそうにしてる子のところにやってきて遊んだりするって。
私にはどういうことか分かったんだ。
もうあの子に会う事はないけど、
もしも会えたら、
「ありがとう」って言いたい。