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Re:    ラナンキュラス*   【短編集】 ( No.59 )
日時: 2011/04/03 21:02
名前: ラズリ ◆ARy56H7Y/M (ID: vLFo5XnB)

「忘れ物は何ですか?」


「もうこんな時間。」

私はいつもの様に時計を見て呟いて、下駄箱へ向かった。

いつもの様に先生に頼まれた仕事をやり、
いつもの様に係の仕事をやって、
帰る時には、空は暗くなりかけていた。

いつもそうだ。
クラスの奴等は仕事を押し付ける。
いつもは気にも留めてないくせに、
都合のいい時だけホイホイやってきて。
マジでウザい。

自分の意見を言えない方も悪いけど。


「早く帰らないと。」

私は足を速めた。

ふと、周りを見た。

「あれ?」

私は足を止めた。

今まで何もなかったところに、店があったのだ。
今まで気がつかなかっただけだろうか。
それはない。
今まで何度も通ったけど、それらしき物は見ていない。
これは何なんだろう。

ちょっと入ってみようかな。

私は店のドアを開けた。
カランカランと、乾いた音が響く。

「お待ちしておりました。」

この店の店員だろうか。
まるで私が来るのが分かっていたかのように言う。

「そこに座っていてください。紅茶を入れてきます。」

しばらくして、店員さんがやってきた。
店員さんは、テーブルに紅茶をおいた。

「あの、ここはどこですか?」

「ここは、忘れ物を探してるひとが訪れるのですよ。」

店員さんはいった。
どういうことだろう。
私に忘れ物なんてないし。

「あなたは、忘れ物などないと思っているでしょう。」

私の心を読んだように言う。

「目には見えない忘れ物を預かっているのですよ。」

どういうことかさっぱり分からない。
目には見えない物?
それは一体何なのだろう。
私が忘れたものはどんなものなんだろう。

「これをどうぞ。」

テーブルの上に何かがおかれた。
ガラスで作られた箱のような物。
オルゴールみたいだ。

「これ、何ですか?」

私は店員さんの方を見る。

「これはあなたの心です。」
「心……?」

店員さんはにっこり笑っていった。

「純粋な心です。オルゴール聴いてみますか?」

私はうなずいて、
オルゴールの蓋を開けた。