コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: フラワーガール!!〜人形と花と能力者と〜 ( No.54 )
- 日時: 2011/08/16 13:30
- 名前: 未来亞 ◆Szx9FxEnrU (ID: 1QpV5ZBE)
- 参照: 無事帰還なり!
第三十一話。
そういえば、明日香はあの日何を言ってただろう。
私に前を向かせてくれた気がするけれど。
私がキレたあの日____________________。
明日香がそろそろ帰ると言うので、私は途中まで送ることにした。
外は暗く、星がちらほらと見える。
明日香はソフィーを入れたカバンを背負い自転車を押している。その横を私は空を見上げながら歩いていた。
「アンタ、首痛くなっても知らんで?」
「別に。大丈夫だ。」
私の答えに、明日香は「そっけないなー」と苦笑する。
「なあ、突然やけどさ。一年後に地球滅亡したらどうする?」
「は!?」
明日香の質問に私の声が引っくり返る。明日香が言いたいのはマヤの予言がどうとか、ってやつだろうけど…。あれって人類滅亡じゃなかったか?…それはそうとして本当に突然すぎる。
「アンタは信じるんか?予言を。」
「え…信じない。アホらしいじゃないか。」
アホらしい。と私は思う。昔の予言が当たってないんだから、もうそんな事気にしなくてもいいんじゃないかと。
「そうか…ウチは少し信じるかもしれへん。信じるかもやけどな、そんな事は頭の端の端に置いといてな、先の事に恐怖するより今を楽しく生きるんよ。」
私は明日香の話をただ黙って聞いていた。
「ほんでな、もしホンマに滅亡する瞬間にあの時良かったなーとか楽しかったなーって思えればそれで良いんよ。」
「…随分とベターな答えだな。」
私が言うと、明日香は口を尖らせながら「ここからが本題や。」と続ける。
「人間はな、過去しか見えへんから面白いんや。未来は分からへん。誰も自分や他人の明日は分からへんやろ?」
「…まあ。」
明日香はそこで尖らせた口を戻し、いつになく真剣な表情になった。
「もしかしたらそれは辛い事かもしれへん。苦しすぎる過去しか見えへんくて辛くてしゃーないかもしらん。でもな、それやったら今を頑張ればええねん。今を頑張れば、今を笑えれば、楽しい過去が思い出として増えるやろ?それは難しい事かもしれへんけど、行動せん事には何もならへん。」
明日香は私と同じように空を見上げて少し笑った。
「人が身を置くんは今や。明日、明後日やずっと先の見えへん未来を考えて今を疎かにするよりも、過去ばっか思い出して今を見れへんくなるくらいやったら、今を大切にして今を頑張る。そうしたら未来も過去もよくなるっちゅーわけや。それがすべて報われるわけちゃうけどな。」
「そうか。……」
明日香は苦笑しながら「でも、」と言う。
「将来設計とか、思い出して笑うとか、そんなんはええと思うよ?行き過ぎはアカンって事や。ウチの話したいことはこれだけ!長く付きあわせて悪かったなあ〜」
明日香はいつものへらへらとしたような口調に戻り、「これはソフィーにも話したことなんよ。」と言いながら自転車を押す。
私は黙り込んでしまった。
辛いんじゃない。
悲しいんじゃない。
苦しいわけでもない。
訳の分からない感情が押し寄せた。
あ、分かった…これは。
怒り、だ。
気付いた時には遅かった。私は明日香に向かって低い声で唸りギロリと睨みつけていた。
「そんなの、綺麗事にしか過ぎない…知らないだろう?本当の…」
「そうかもしれへん。綺麗事、やなあ。でもウチはこう思う。ああ思うって言うのを仕舞い込んだりするんは嫌いやねん。だから空気読めないだの、よお言われるけどな。」
明日香は、全く動じない。
どうしてだろう。
前に進もうとして、間違って、あがいてあがいて。
その連続に、慣れなきゃいけないはずなのに、私はそれを止めて。
自分の殻に閉じこもった。
前を見よう。
考えるな。何も。
いっそ過去を捨てられれば楽なのに。
でも前を見ないと、現実を見ないと進めないのだから。