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Re: 妖言遣い 【短編集】 ( No.12 )
日時: 2011/03/21 15:39
名前: 玖夙友 ◆LuGctVj/.U (ID: Omw3dN6g)


          *

「扉は閉じるためにあるよ。開けるためだったら、扉じゃなくてでかい穴でも開けとけばいい」
「閉じるためなら壁を隔てろよ。いらないものが捨てられなくて棄てられなくて、息苦しくなって死ね」
「お前こそ死ね。誰にも想われず死んだくせに」
「お前と違って誰かを想えて死んださ。ま、その想われた側は、こんなカッコよくなくて馬鹿なやつに想いを寄せられてるなんて、鳥肌ものだろうけど」
「違いない。どーでもいいと想われ——いや、そもそも想われたくないなんてやつさえいる。まあ、そんなやつに限ってモテまくりだったりな。羨ましいったらねえぜ」
「口だけの構ってちゃんもいるけどな」
「あ、おれ正にそんな感じだったわ。奇を衒って不思議ちゃん装ってみたんだがね、寂しいったらねえよ」
「ふぅん。ロクデナシくんも大変だったんだね」
「変態だったよ。いや、いまでも変態だな。キミはどうだいキリソクラくん」
「ボクかい? そーだねえ、死ぬ前の一週間くらいだけど、世界かキラキラして見えたよ」
「ほほぉ、また嘲笑的な」
「抽象的ね。別にキラキラ光って見えたってわけじゃなくてな、なんか、何をするにも面白かったし、嫌ってほど繰り返してきたことなのに、新鮮だった」
「どってよ? 慣れや経験でなんにでも飽きがくるのに、何がそんな新鮮だったん?」
「そーだねえ……ご飯、かな」
「…………。いままで食べたことのない味を知ったのか?」
「違う違う。ボクはいつもボぉーっとしてたからさ、ご飯を味わって食べたことなんて随分と久し振りだったと思う。それにね、クラスメイトや近所の人との他愛ないお喋り、得意じゃない遊びなんていうのも、つまらないし笑えなかったのに、楽しかったよ」
「矛盾してね?」
「そーかも。あ、あとね…………」
「ん? どしたよ?」
「久し振りに、他人と手を繋いでみた、んだけどね……」
「うぉ、で? で?」
「……いちいちムカつくなキミは」
「よく言われます。で?」
「…………」
「言いなしゃいよキリソクラ、お前もうすぐだぜ? な? さあ! 勇気を出して、恥ずかしがらず」
「くッ……」
「はぁーやぁーくぅー」
「……んぅ、じゃ、言うから茶化すなよ」
「おーけーおーけー」
「えと……久し振りに他人と手を繋いでみて、その……くすぐったかったんだよ、手が」
「うぉー、ウブだねえ」
「し、死ねッ!! お前いますぐ死ね!」
「ままっ、そー仰らず。——お? キリソクラくん、キミぃそろそろだ」
「消えるのが?」
「そゆこと。いやー、にっしても、キミみたいのに会うのはあんまりないからね。来世でまた死ぬときにでも、ここにきてよ。多分、憶えてるから」
「こようとして、これるの? ここ」
「無理、かも」
「嬉しそうに言うなよ」
「ごみんごみん。でもま、楽しかったよ。——さ、死んでこい」
「おお、死んでくるぜ」
「何か言い残すことあるかい少年?」
「お前の名前は?」
「そんなことかい。いいよ、教えてやろう。ロクデナシって意味で、××だ。さよなら」
「名乗ってさよならか。ビミョーだね」
「だね」
「ほいじゃ、」
「天文学的にありえないけど、縁があったら、また」
「うん、バイビー」
「地獄で会うぜ」
「いや、ここでまた会おうぜ!?」