コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ( v o l u m e . ) ( No.3 )
- 日時: 2011/02/24 20:57
- 名前: 綾莓. ◆83sPk9nC26 (ID: 5RAlDtaS)
♭ Volume . 01
陰からずっと見ていて、言いたいことがあります。
ずっと溜めていた、この桜色の淡い気持ちは、もう誰にも止められない。
「 好きです 」
わたし、紗月 美声 はひとりごとのように呟いた。て言うか、まるっきりひとりごとなんだが。
わたしは生まれつき声が出なくて、言った言葉も「 え? 」と聞き返されてしまう事が凄く多い日常を過ごしている。
わたしだって、恥ずかしい時や怖い時。心から思い切り叫びたいよ。
でも、"君"を失いたくないから。
でも、"君"に迷惑をかけたくないから。
ふたりのわたしが、心の中で言いあう。
"君"とは、いつもわたしを庇ってくれる幼稚園から一緒の幼馴染の、沢渡 恵太 のこと。
声が出ないわたしの言葉を、いつも聞き取って伝えてくれる、とても心優しいわたしの大事な幼馴染。
恵太はかっこよく、異性・同性どちらからも人気者である。そう、わたしとはまるで正反対の人だ。
何でそんな人がわたしの事を庇ってくれるのかは、わたしでさえ分からない事。
だけどわたしはそんな恵太を、昔から好いている。
( 何こいつの声、意味分かんない )
わたしと出会って近寄ってきてくれた人は、こう告げて皆離れてゆく。
そんな時も恵太は、わたしの事を庇ってくれたよね。
わたしに友達が居なくて、泣いている時も隣に居てくれたよね。
だから、君は人気者なんだ。
わたしが君と対等な人間でいたら、きっと君はわたしに構ってくれなかったよね?
君が好き。
———*.
「 よ、美声。今日の喉の調子は? 」
いつものように、恵太が声を掛けてきた。
いつも恵太がわたしに言う一言目は、「 喉の調子は? 」だ。
心配してくれるのは嬉しいけれど、そんなすぐに治るようなものではないだろう、わたしの場合。
「 ん…だぃじょぅぶ…ヵ…な 」
弱弱しい声で、わたしは"大丈夫"と返した。
全然、大丈夫じゃないだろう、絶対。
「 え、…ああ、全然大丈夫じゃないだろ 」
理解するのに時間があった。
理解と言うか、聞き取りずらくて、何て言ったのかを確かめていたのだろう。
他人は「 何て言ってるの? 」と言うパターンを、恵太はちゃんと理解して受け答えをしてくれる。
そこからまず、いいんだよね…
そうして、わたし達は歩き出した。
え?どこへって?
学校。
わたし達が通う、高校へ。
( V o l u m e . )