PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- §あなただけ ( No.31 )
- 日時: 2011/03/21 18:06
- 名前: 祐希 (ID: xJuDA4mk)
//11. …牧内side
俺は、牧内幸太郎。俺はこの冬、好きな人に告白された。
俺の好きな人は、『朝岡満李香』さん。正直、俺はずっと好きだったんだ。
——あの人の心の、深い悲しみを知ったときから。
ずっと、あの人のことが目に入るようになってて……。
朝岡さんは、誰が好きなんだろうって本気で思ったりもした。
そのくらい、好きだった。
————
「……でしたっ」
朝岡さんと、井村さんが立ってた。
井村さんは俺の隣にいる たかし に向かって「好きでした」って言った。
じゃあ、朝岡さんは……俺に向かって言ったの?
この言葉の意味は、「好きでした」って意味?
そしたら、朝岡さんは……俺のことが、好き……?
ぐるぐると頭の中で思いを巡らせた。
大して頭のまわらない俺だけど、いま出来る最大限の力を使ってこの言葉の意味を理解しようとした。
でも、「好きでした」という意味にしかならなくて、俺は浮つく思いを抑えきれなくて。
隣の たかし に軽く目配せをした。
——俺は、この想いを口にしてしまってもいいのかな。
朝岡さんと同じ想いだったことが、何よりも嬉しくて仕方なくて。
「俺も好きです」。そう言おうとした唇を、たかし に止められてしまった。
——なんでかって?
「ごめん、井村さん。俺、知ってたんだ。井村さんの気持ち」
たかし が、こう応えてしまったから。
俺は、続ける言葉を見失ったまま、朝岡さんから遠のいてしまった。
————
「朝岡さん、俺は本当は——」
あなたのこと、好きだった。
けど、伝えられなかった。何であのとき、伝えるのをためらってしまったんだろう。
——あのとき伝えていれば、俺はいま朝岡さんの隣にいられた?
繰り返される後悔に、心が支配された俺。
もう一度、あの日に戻れたなら……朝岡さんを傷つけることはなかったのに。
PR