PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- §あなただけ ( No.34 )
- 日時: 2011/03/21 19:41
- 名前: 祐希 (ID: xJuDA4mk)
//13. …昴side
俺は、昴 大和。最近、好きな人ができた。
この前、廊下の曲がり角を曲がったとき、ぶつかってしまったけれど。
「あの人……名前、なんて言うんだ……?」
あの日、座りこんでるあの人に、右手を差し出した。
そして、左胸の名札を見た。
——『朝岡』。
それが、俺と朝岡さんの……最初の出逢い。
それから俺は、朝岡さんが気になりだして……今に至るわけだ。
完璧に、恋をしたと言ってもいいだろう。
廊下を歩いていても、校庭を走っていても、目に映るのは朝岡さんばかり。
朝岡さんが視界に入ると、心が和やかになって、自然と笑みがこぼれる。
すると、朝岡さんは、困ったように笑って。
その表情にまた、俺は心を揺らされる。
でも、ときどき気になることがある。
中学になって友達になった、こうたろう のことだ。
こうたろう は、朝岡さんと同じ小学校だったから、朝岡さんのことをちょっと聞いたんだ。
確か、「朝岡さんってどんな人?」って聞いたと思う。そうしたら、あいつは。
——すごく、辛そうな顔してて。今にも泣きだしてしまうんじゃないかって。
まるで、触れてほしくない……とでも言うかのように、ぐっと噛みしめた顔。
それから、こうたろう には、朝岡さんの話はしていない。
本当は、すごく気になるんだ。
あんな顔するくらいだから、きっとよっぽどのことがあったんじゃないかって。
俺は、——俺は。
朝岡さんの——「過去」を、知らない。
PR