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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- §初恋物語 ( No.65 )
- 日時: 2011/03/31 13:36
- 名前: 祐希 (ID: xJuDA4mk)
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「——俺……明日で、転校するんです」
——え?
何それ……。
そんなの、聞いてない。
分かってたら、もっと。
ちゃんと——……早く、言えてたかも知れないのに。
急にしんみりした空気になった。
「でも、よかった」
不意に、平池くんがそう言った。
さっきの声色とは違う、何かをふっ切ったような、そんな声だった。
「転校する前に、『彼女のいる俺』でいたかったんです」
『動機が不純すぎますよね』と、薄く笑う平池くん。
ううん、不純なんかじゃない。現にこうやって、こんなあたしを好いてくれた。
平池くんは、いい人だよ。心のなかで、あたしじゃない誰かがつぶやいた気がした。
いい人だなんてことは、出逢った最初から分かってた。
——平池くんが、告白してくれた……あの瞬間から。
あたしは、きっと分かってた。
「でも、これもらえただけで満足です。俺なんかのために、ありがとうございました」
にっこり微笑んだ平池くんの笑顔には、悲しみがうっすらと滲んでて。
衝動的に、引き留めたい気持ちが上辺に出てきそうになった。
「それじゃあ……」
遠回しに、【 さよなら 】 を伝えた平池くんに、とっさにあたしは言ってしまった。
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