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§ほんとの言葉 ( No.106 )
日時: 2011/07/10 23:35
名前: 祐希 (ID: xJuDA4mk)

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「——やきた、」


 久しぶりに呼んだ気がするその名前。 名前の持ち主は、困った笑顔を浮かべて小走りに走り寄ってきた。


「なんだよ、まひろ」
「いや。 焼田に言いたいこと、いっぱいあったのに言えなかったからさ。 いま言ってもいい?」
「——言いたいこと?」


 怪訝な表情を浮かべる焼田に、あたしは笑ってみせた。


「まず、ありがとう。 あのとき、励ましてくれて」
「——おう」
「それから、ごめん。 あのとき、何も言えなくて」
「——分かってる」
「それとさ、————っていうラジオ、あれアンタ出てたでしょ?」
「げ。 何で知ってんの?」
「聞いてたからだし。 てかそのラジオ番組、あたしのお気に入りだったからね」
「まじか……」
「それから!」


 その言葉を伝えるには、一緒にいる年月が少し長かったあたしだけど。


「——焼田のこと、好き」


 短い言葉でも、きっとあいつは分かってくれる。 どこから出てくる自信なのか分からないけど、もはやその気持ちでしか動いていなかった。 いわゆる、あたしって感情的なんですよ。 好き、好き、気持ちが溢れてやまない。


「返事は聞かない。 だけど、嫌いにならないで。 今まで通りに接してくれたら、あたしはそれでじゅうぶ」
「何で返事聞かねえの」

「——ん?」

「何で返事聞かねえの、って言ってんの」
「いや、だって結果なんて分かりきってるし。 焼田があたしのこと好きなわけないだろ」
「決めつけんなよ。 俺はずっと——まひろが、」


 赤面する焼田が愛しい。 てか可愛い。 焦ってるのかどうなのか、ずっとあたしの名前を繰り返してる。




 あいつから言葉が返ってこなくても、あたしはほんとの言葉を伝えることが出来た。
 ——影から励ましてくれてた焼田。 ありがと。 ……そんで、大好き!







 §ほんとの言葉......