コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 古本少女! ( No.1 )
- 日時: 2011/03/13 21:02
- 名前: 月読 愛# (ID: OJbG5PHc)
誰も知らない場所がある———
僕はある場所へと向かっていた。
そこは、僕が通っている桜霞高校から結構近いが、意外と知られていない場所だ。
そんなこんなで、到着。
少し歩けば、目的の場所へとたどり着く。
用があるのは、そこに立つ大きな木。
小動物くらいが入れるくらいの穴があって、その中に、大切なアレがある。
アレは何かって?
それは、これからお見せするよ。
こんな感じで奥に手を伸ばせば……
そう、こうやって…… ん?
こう……
ほ……
「なあああああああああい!」
僕は悶絶した。
アレがないなんて、僕は、僕は
「どうすればいいんだぁぁぁぁぁぁあああ!」
「うるさいわね!」
甲高い、しかしとてもよく通る声が後ろから聞こえた。
戸惑いながらもその姿を確認する。
そこには、長い黒髪をなびかせて、仁王立ちに腕組、鋭い瞳を兼ね備えた、美少女がいた。
今まで見たことがないその輝きに、僕は見入ってしまった。
のも一瞬。
「さっきから、何よ。それにここ、あたしの家なんだけど!」
はい?
何を言ってるんだこの女は。ここは誰の敷地内でもない、ただの……
そう思いながら、もと来たほうを振り返る。
「え。こんなのさっきまでは」
言葉を失ってしまった。
僕の視界には、さっきまで確かにあった、あの木の場所に
見知らぬ小さな家が建っていたのだ。
どういうことなんだ。
「あの……」
「なによ」
「ここにあった木は?」
はぁ?という風に表情を歪ませる彼女は、鬱陶しい様子で話始めた。
「ここは、最初から、あたしの土地なの。木なんかないわよ。最初から。ここにはこの家しかないのよ」
「でも……」
ここで僕は思い出す、アレの存在に。
「そうだ!アレ!この近くでアレを拾わなかった?」
「……アレ?」
「うん」
しばしば考えた後、彼女は待って。と素っ気無い返事を残して家に帰ってしまった。
そして五分くらい立つと、アレを持って出てきた。
「これか?」
渡されたそれを確かにアレだと確信。
「そう、これ。いやーありがとう。保管しててくれたんだね。なんてお礼を、」
「何してんのよ」
「はい?」
なぜか美少女はいきなりキレた。
「何って……」
「何でこんなところにそれを放置したのかってことよ」
「それは……誰にも見つからないかなって、思って」
「それだけ?」
「うん」
はぁ。と短い溜息。どうやら気持ちは伝わったようだ。
「どうしてそれ……その本は見つかりたくないのよ。そんなもの、もってても価値はないわよ」
「それは、分かってるよ。これは、僕のお父さんの形見なんだ」
「形見?」
「そう。なんでだか知らないけど、この本は白紙で、最後のページにだけメッセージみたいなのがあって、外国語みたいで読めないけど」
「『導かれしモノが現れたとき、汝は担い手となる』こう書いてあるの」
「どういうこと?」
「言葉じゃ到底説明できないわ」
こっちへ。と彼女は家へと案内する。
中に入った途端、宇宙のように広い空間が広がって、あちこちに数多くの何かが宙を舞っていた。まるで星のように。
そのうちの一つに手を伸ばす。
「これは……古本?」
「そうよ」
美少女は螺旋状の階段をのぼり、高い位置にある球体の物体に腰掛けた。それは誰もが知っている、惑星———地球だった。
と言ってもけっして本物ではない。しかし、そのクオリティーはずば抜けている。
「ここにある古本は、今まで人間がくだらない理由のために捨てられたものたち。誰にも拾われず、気付かれず、放置された、世でいう
『不要なもの』たち。それを片っ端から拾い集め、管理するのがあたしの仕事だ」
「……仕事って……君は一体」
「あたしの名は霜月 そら(しもつき そら)。
別の名を、”古本少女”という」
「古本……少女?」
「この組織での名だ。コードネームとでも言っておこうか。藍川 湊(あいかわ みなと)」
僕の名前! どうして知ってるんだ。
「名前を知っていて驚いたの? 本当にこいつが導かれしモノなの?」
「その、導かれしモノってなんだよ。あの本に書いてあったことだろ?」
「簡潔にいうわ。古本管理責任者であるあたしを動かす担い手になってほしいの」
表情からして、真面目に言っているらしい。そのまま続ける。
「ここにある古本を管理しているのはこの宇宙であたしのみ。最近、さらに不要なものが増え続けていて、このままでは体力がもたない。だから、さらにあたしを操作する担い手が必要になった。今までの担い手は三年前に亡くなったわ」
「それって」
「そう、あなたのお父様よ」
お父さんはただ病気で死んだんじゃなかったんだ。
「担い手は何かしらのつながりがあるらしく、身内へと継がれやすいの。きっと、だからあんたに受け継がれたのね。操作能力」
ここまでを整理すると、
僕のお父さんはこの古本少女とやらを操作する組織の担い手だったらしく、その父が亡くなった今、僕に受け継がれている。
そうしなければ……
「どうなるんだ?」
「この街、いいえ、世界全体が本によって破壊されてしまうわ」
想像すると、なんともいえない情けない滅び方だが、
相当深刻らしい……。
それから僕はある部屋に通され、そこにあった、ベッドに寝るよう言われた。合図があるまで目を開けるなと。
合図は眩しい光だった。
ゆっくり目をあけると、青空が広がっていた。
僕はさっと起き上がり、辺りを見回す。どうやら、しばらくここに寝ていたらしい。
家もなく、いつもの光景が広がっていた。
「夢……なのか?」
そう感じたのも一瞬。手に持ってた本に気付く。
「これは……」
あの時に手に取った古本だった。
改めて、夢ではなかったと実感した。
それからだ、僕のまわりに異変がおき始めたのわ。