コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 古本少女! ( No.100 )
- 日時: 2011/03/30 21:09
- 名前: 月読 愛 ◆o9WCM38pVQ (ID: OJbG5PHc)
僕と榊原はたわいもない……いや、受験の話をしながら
榊原家への道を歩いていた。
少し曇ってきたせいか、辺りが不気味に見えた。
というのも、ずっと一本道のこの道は人通りも少なく、
狭い道であるので車もすれ違えないほどなのである。
だからほとんど車も通らないんだとか。
しばらく歩くと、なんだか違和感を覚えた。
(この匂い、知ってる)
草木の懐かしい、大好きな匂いがした。ただの植物なんかじゃない。
いつも行っている、僕だけの場所と同じ匂い。
相変わらず狭い道に初のT字路が見えた。と、ここで榊原はピタ、と
急に止まった。
スカートを翻して、満面の笑顔で振り返る。
「ねぇ、近道しない?」
「近道?」
「うん」
彼女はすぐ道路を無視して、近くの林のなかへと足を踏み入れた。
「え、ちょっと!? 榊原?」
彼女には似合わない行動に驚く。相手は意味に気付かす、頭の上には
クエスチョンマークがくっついている。
「ここからだと近いの。あ、自然は嫌い?」
「へっ?」
「あの……爬虫類とか、両生類代表のやつとか」
「いや、別に僕は平気だけど」
「そっか。じゃあ大丈夫。ほら、行きましょ。ここらへん真っ暗になるの早いし、そうなると危険だからさ」
「あ、そっか。ごめん」
僕は慌てて彼女のあとをついていった。
しばらく同じ景色の中を掻き分け進むと、広めの見慣れた場所にたどりつく。
「ふぅ。ひとますここで休憩しよっか。いい場所じゃない。ね?」
「あ、うん。そうだね」
そう言いつつ僕は真ん中に位置する大きな木にそっと触れた。
(この木似てる)
木の周りをゆっくり見て回る。
(やっぱり……)
そこには小さな小動物が入れるくらいの穴が開いていた。
手をつっこんでみたが、中は何もなかった。
特に意味はなく、上を見て深呼吸。パッと後ろを振り返る。
期待していたのだが、立っていたのは一人の少女だけ。
さっきから一緒にいる榊原だけだった。
僕はその場に座り込んで今にも雨が降りそうな空を見上げる。
さっきはもう少しマシだったな……。僕も。
というか……榊原もこの場所知ってたのか。
自分の場所だと決め付けていたのか?僕は。
でも……
また脳裏にこの間と同じ思いが浮かぶ。
心はいつも以上に興奮して熱い。
これはチャンスなのか?
「なぁ、榊原」
「ん?」
「あのさ……この場所どうやって知ったんだ?僕、この場所好きで
高校に入る前からずっと来てたんだ」
「あら、そうなの? じゃあ家の近くまで来てたんだね。
私はこの場所の雰囲気とか空気が好きで。自分をリセットしたいときによく来てたのよ」
「そう……なんだ。最近は来てなかったの?」
「え?……うん、まぁ。最近は忙しくて」
「そっか……」
その後言葉が繋げなかった。
きっと榊原は嘘を言っている。そう勘付いてしまったからだ。
だって、僕が質問した時の彼女の表情。
あれを見たら普通の人間だったら逃げ出すんじゃないかな?
……これは大袈裟かもしれないけど、それくら、まるで鬼のように眉間に深いしわをよせ、普段の彼女からは到底想像できないほど
だったんだ。
自身は気付いてないみたいだけど……。
それから榊原は何事もないかのようにいつもの笑顔で
再び歩きだした。
彼女の後ろ姿を見ながら歩く。
そこでふと、気付いた。
この感覚知ってる。
この感じ……誰かに似てる……?