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Re: 古本少女! ( No.148 )
日時: 2011/04/29 14:54
名前: 月読 愛 ◆o9WCM38pVQ (ID: OJbG5PHc)

第四章

「戦争ってなんのこと?いきなりすぎて意味分かんないよ」
「なら教えてあげる。全部」
古本少女はほらと短く僕に声をかけ、手を差し出す。
「え?」
「早くつかまりなさい。行くわ」
「え、うん」
僕は言われるがままに彼女に手を伸ばす。
強引に僕の手をつかみ、ものすごい勢いで上にひっぱられた。
「うわ!ちょっと、空飛んでる!?」
「普通よ。これくらい。これからこういうのも増えていくから」
「それってどういう……」
古本少女の返事はなく、ただ黙って空高く飛び続けた。
「ここ」
そう言って僕に辺りを見回させる。
「なんだこれ……」
そこに広がっていたのは僕たちの街、しかし、それはもう原形を留めていなかった。ところどころに焦げたように黒くなっていたり、
大きな穴があいていたりした。そして、一番奇妙なのはなのは
その形が本の形に似ていること。
「どうなってるんだよ、これ」
「言ったでしょ。戦争がはじまるの」
「……」
「この街は私たち古本管理人によって守られていたわ。でも、私たちを操作しているのは担い手。つまり今はあんた、藍川 湊。
そして、担い手が私たちを捜査するための条件に、感情のコントロールとい枠が存在する」
感情のコントロール?なんなんだ、それは……?
あ……。
「気付いたようだな。そうだ、あんたは母親とぶつかっただろう今までは抑えていた感情、それをこの間乱したんだ。その時にあたしは倒れた。力がなくなったから」
「え」
「あんたが感情を操作できなくなったから、あたしはもう古本少女という立場に立てなくなったの。今は残りわずかの力でここにいる。
あんたが、湊がバランスを崩したということは、このセカイの破滅を意味する。この意味、分かる?」
古本少女は僕を寂しい目で見つめていた。
「いや、僕にはわからないよ」
「そう……」
残念ね、と彼女はつぶやいた。それは今までに見たことのない表情で、僕は戸惑ってしまった。
ふと顔をあげ、再び寂しげな目が僕に向けられる。
「……あんたが、このセカイを壊したってことよ」
「!」
 古本少女は、一瞬微笑んだかと思うと、その目を伏せた。
僕は息を呑んだ。繋いだままの手の甲に温かな涙がこぼれた。                

   ・・ ・・
———霜月 そらが泣いていた。


「……もう一つ……もっと…いっ…かっ……」
「何?」
霜月は僕の手を強く握りしめた。
「湊ともっと一緒にいたかったよ!」
 僕はようやく気付いた。もう古本少女じゃないということは、僕も担い手なんかじゃない。このセカイを僕が壊してしまったというのなら、
もう古本少女は必要ない。僕のそばから彼女は消えてしまう。
必要ないのだから。
そして僕と彼女のつながりもなくなる。今に至るのだって担い手になるためだけのものだ。
なんで今まで気付かなかったんだ。
 僕は自分があの時以上に愚かに感じた。
目の前で本当の霜月そらが泣いている。僕はどうしてこうなんだ。
いつも結局だめなんだ。
そしていつの間にか、僕たちは、見えない何かで繋がっていたんだ。それを自分から切り離してしまった。
でも、ただ一つ言えることは、
『僕は』
『私は』
『あなたのことが好きです』