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Re: 古本少女! ( No.153 )
日時: 2011/05/01 22:53
名前: 月読 愛 ◆o9WCM38pVQ (ID: OJbG5PHc)


すべて幻だったらいいのに。
このセカイも。この現実そのものが偽りだったら……
僕も、霜月も、古本少女だって苦しまなくて済んだのに。
「古本少女」
「だから私はもう……!」
「好きだった」
「……」
「ありがとう。僕にはセカイを守るっていう父さんと……古本少女に与えられた使命があるから。僕は守ってみせる」
僕は霜月を力強く抱きしめた。
「最後に、霜月に頼みがあるんだけど」
「?……何」
「榊原姉妹とののかについてなんだけど」
彼女からの回答をきくと、
僕はずっと胸に引っかかっていたものから開放された。

(やっぱり、そうだったんだ。あれは錯覚なんかじゃない!)
僕には今まで以上に強い確信を抱いていた。

「じゃあ、いってくる」
「うん……さよなら」



僕は目が覚めた。
しかし、さっきの出来事は夢ではない。
これは決定事項である。
あれから霜月にこの場所におろしてもらった。
彼女は赤くはれた目で優しく僕に微笑んだ。それはののかの本の研究で古本少女の特訓を受けたときにみたものより、何倍も綺麗だった。
僕も笑顔で返し、繋いでいた手はついに離された。
「目をつぶって、後ろをむいて」
いつもの調子で冷静な声がかかる。
僕は無言で言われるがままに、従った。
もう少しで終わってしまうんだ。そう思うと無性に悲しくなった。
しかし、表には出さない。
きっとまた会えると信じてるから……。
「うん。そのまま。じっとしてて。……湊」
「ん?」
「私、あんたのこと好きなんかじゃない」
「え……?」
「もう……大好き!」
「!」
後ろ向きだったので彼女の表情は伺えない。
それどころか、すでに光のなかへと消え、僕が振り向いたときには
もう何もなかった。
「っ……!」
僕は大きな木にもたれてなき続けた。
次期にくらくなり、涙も出なくなった。
僕はふと小さな穴に手を伸ばす。
「これは……」
それは、父さんの形見だった。一度古本少女に没収されてしまったものだ。
(最初は印象最悪だったよな)
人間、こんなにかわるんだな。
それを脇に抱え、暗くなり始めた空を見上げる。
「さよなら、古本少女」



 僕はあれから守るための計画を練った。一人でやるのはつらかった。しかし、あの日から毎日ポストにキーワードのようなものがかいてある手紙が入るようになった。
送り主は無記名。気になりながらも、きっと古本少女と関係のある人だと信じて、頼りにしていたりもした。

「ねね!今日朝、いちご食べたの!」
「あーそうかい」
「うん!でね、もう凄い大粒のがあって、のわぁってなってね、
あたし、」
「あのさ、ののか」
「何ぃ?」
「霜月そら、って知ってる?」
「霜月、そら?女の子?ええ?知らないけどぉ〜あ、ピンポーン!
それってもしや湊の彼女とかぁ?」
「はい?違うって、そんなんじゃないよ。ちょっとふと脳裏にこの名前が」
「ふう〜ん。ま、いいや。でね。」
「あのさ、ののか」
「何?もうこの数分で二度目だよ、その台詞」
「知ってるよ」
不思議そうに首をかしげるののかを真剣な目で見据える。
「今日の放課後、あの木の下で待ってるよ。ののか、いや、メルヘン童話少女」