コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 古本少女! ( No.190 )
- 日時: 2011/07/06 00:07
- 名前: 月読愛 ◆YUGvIhJsVY (ID: akJ4B8EN)
古本少女の兄だって?
「それは一体……」
「んー。混乱しているようだな。まぁ予想はしていたが」
何が言いたいんだろう。
唐突に現れて、しかも相手は僕のことを知っていた。
どこで?——それは古本少女からだとしても、どうしてここへ?
あれ?
僕はふと、違和感に気付いた。
「あの。苗字ちがいますよね?それはどういう」
ああ。と面倒そうに頭をかきながら答えた。
「親が離婚したんだ。丁度三年前か」
三年前……。
この年月、嫌なほど聞いたよ。
「そうなんですか……」
「お前が聞きたいのはそれで終わりなのか?」
「え?」
腕を組みながら足をクロス。全身を黒の服でまとった。長身の男性。そんな男は僕を真っ直ぐに見据えている。
それは、彼女と初めて会ったあの日を思い出させた。
僕はこの状況を無視すること出来ない。逃げることが出来ないようだ。
「その顔は、たくさんあるようだな」
「僕はさっき、ののかをあの木の下に呼び出しました。その時に、榊原からこれを渡されました。
僕は榊原から受け取った本——彼女の家に行ったときに見た——を差し出した。
「分かったんです。どうしてこんなことになっているのか。誰が誰で、どうすれば回避できるのか。その後のことは……まだですけど」
「違う」
「え……」
予想外の返事に僕はうろたえた。
「お前は何も分かっていない。メルヘン童話少女の正体を見破ったのは見事だが、その他は全くだ。それに、榊原の家にいった目的はなんだった」
「ののかが買ったマンガの……」
あれ?マンガについて確かめるために彼女の家に行ったんだ。それで、この本を見つけて、父さんの形見と同じ種のものだということに気付いて、それから……結局それは手に入れられなくて……
でも今は僕の手にある。ののかがメルヘン童話少女。
——おかしいじゃないか。
「ののかがメルヘン童話少女なら、榊原の立場はどうなるんだ?彼女はこの本について、おそらく争いについても全部を把握しているはず。
でも、彼女には妹がいて、その子がもっとも関係しているはずで、その子から……莉乃から、ののかはマンガの情報を入手したということになっている。つまり……」
僕は自分の浅はかさにやっと気付いた。
「ののかと莉乃は同一人物だって言うのか……?」
雄は僕の独白を表情一つ変えずに聞いていた。きっと彼は最初から知っていたんだ。今日、放課後にののかが来るということは、莉乃も来る。
「ちなみに言っておくが……メルヘンの主体は莉乃のほうだぜ。ののかは利用されているにすぎん。能力はたいしてない。お前が妹に会った翌日に、担い手にふさわしいのか試すために、妹はののかの心を操作しのを覚えているか。それが安易にされてしまうということは、担い手にふさわしいと判断することも可能だが、同時に……彼女、桜木ののかは心が奪われやすい存在ということになる」
分かっただろうと言う風に、再びその目は僕を見据えた。しかし、さっきとは違う、優しい雰囲気で……僕は激しく——
「ごめん……ののか……!」
——謝りたくなった。
ののかは僕の異変に気付いていたんだ。僕がおかしいのを悟って、自分の存在を教えようとしていたんだ。
そして、彼女は僕に、自分がメルヘン童話少女に操られていることに気付いて欲しかった。
全然……
「あのなぁ」
僕の心理は混乱したまま、またしても雄が話題を持ちかける。
「俺がいいたいのは、こんな話じゃねぇ。面倒なことは一番嫌いでな。関係のないことは関わらない義理なんだ」
何だろう?
「古本少女が、霜月そらに戻ってしまった理由て何だと思う?」
それは
「僕の感情が不安定だから……じゃないんですか」
彼は軽く溜息をついた・
「そこは分かっていたようだな。少し安心した」
どうやら安堵溜息だったらしい。なによりだが。
「じゃあ、本当の理由はなんだと思う?」
「だから……」
「それ以外に。最高のパートナーであるお前を、わざわざ離して独り身になる、通じ合っているにも関わらず。普通に考えておかしいだろう」
「そうだけど、それは僕が悪いんであって……」
「お前の力は不足している。それは今も同じだ。でも、妹だったら、それを自分の力でなんとかしようとする。違うか?」
僕はからだが強ばるのが分かった。
「そうだ……。あいつは……一人でこの戦争に立ち向かおうとしてるんだよ」
僕は走り出していた。学校なんてどうでもいい。
今から会いにいくんだ。場所は?そんなのあそこしかない。
僕と古本少女の始まりは、いつもあの木だったんだから!