コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 古本少女! ( No.211 )
- 日時: 2011/07/21 22:14
- 名前: 月読愛 ◆YUGvIhJsVY (ID: akJ4B8EN)
第五章
僕があの場所に辿り着いたのは、雄と別れてから三十分後のことだった。いつも通いなれている道がこんなときに限って長く感じた。
息を切らしながら小動物が入れるくらいの穴を確認し、その木に軽く触れてみた。もうすぐ夏が来る。そのせいなのか少し湿っていた。そのうち梅雨がきてここは泥沼状態になる。
それでも僕は、ずっとここに通い続けていたのを思い出した。
春には桜の花を——夏には蒼い葉を——秋には紅葉を——冬には結晶を——僕はずっと知らなかった。あの日古本少女に会うまでなにもかも。
父親の本当の死因。世の中の構造さえ、テレビの中の情報だけでは得られないことが今では理解できたり、それをも僕自身が救おうとさえ考えているなんて……。
嫌な世の中になったもんだ。戦争だなんて……。
「嘘だって……」
家はない。何度振り向いても彼女さえ現れなかった。肝心なメルヘン童話少女さえ怪しく思えてきた。本当にくるのか?
僕はまた勘違いを? ——いや。
「きっと来る」
なんとなくだけど、またそんな気がした。
あれからどのくらいたったのだろう?
僕はどうやら眠ってしまっていたらしい。木にもたれていたらしく、身体もあちこち痛かった。
ゆっくりと伸びをすると、その右手が何かにあたった。
僕は一瞬息を呑んだ。
(誰から背中合わせに座っている……?)
恐る恐る静かに立ち上がり、そっと木の後ろをのぞいてみた。
「……」
そこには誰もいなかった。
「あれ……」
何の気なしに振り向くと、位置はずれているものの——古本少女の家がしっかりと存在していた。
僕はただその建物を見つめていた。もしかしたら中には……。
すると、扉が静かに開いた。
一応警戒はしてみた。もしかしたら敵が出てくるかもしれないからだ。
しかし、やっぱりこの家は彼女のもの。予想通り。
「……!」
彼女は僕の顔を見るなり驚いた表情をした。
「古本少女……」
僕は自分の決心を伝えた。
「僕は古本少女の担い手なんだ。でも、単独行動は許可してないよ」
あまりのぎこちなさに、彼女は微笑を浮かべ、僕を宇宙空間へと進めた。