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Re: 古本少女! ( No.232 )
日時: 2011/12/02 21:01
名前: 月読愛 ◆YUGvIhJsVY (ID: F/CIbMuI)


「待たせたな」
「いや……」
「ところで……」
 古本少女は顔をしかめた。
「どうしてここにきたんだ?」
「え?」
 予想外の発言に変な声が出た。
「雄に言われたのは承知しているが、それだけじゃないと思っていたのだが」
ああ……結局彼女には隠し事は出来ないってわけな。
「その通りだよ。メルヘン童話少女って言えば伝わる?」
「なるほど」
「理解早すぎだろ、さすがに」
「予感というものか?」
「うん。なんでかわからないけど……朝、ののかに会ったんだ。ののかがメルヘン童話少女だと思っていたんだよ。だけど、あれは仮の姿であって、ののかはののかだ。そう気付いたとき、本体がどこにあるのか調べる必要があると考えた。それと同時にそれは誰なのかってことも浮かび上がってきたんだ」
 僕は今まで感じてきた不可解な感情を全て古本少女に話した。その間彼女は、固まった人形のように、微動だにせず、表情一つ変えないで、僕の話をただただ聴いていた。
 話が終わると、しばらく彼女は黙ってどこか遠くを見つめていた。僕はさすがに不安になって口を開こうとすると、彼女はゆっくりと右手を僕に伸ばしてきた。わけも分からず、僕も手を伸ばし、その手に触れてみる。すると彼女は強引に僕の手を握り返すと、自分の方へ引き寄せた。
「え……!?ちょ、そら」
 僕は戸惑いつつも彼女の返答を待つ。しばらくすると、再びゆっくりと僕を引き離す。さっきよりも近距離でお互い向き合う形になった。
「湊」
「……」
 久しぶりに呼ばれた僕の名前は、とても儚いものに思えた。僕自身の存在も簡単に消えてしまうのだろうか?
「動揺せずに、冷静にきいてほしいことがある」
「……うん」
「これから、何度も言うように、世界規模な対戦に向かう。今私の力は不十分で、湊の力を借りても、存分な能力を発揮することは不可能なんだ。そこで、考えた。私が順序を作る土台になる。だからそれを利用して、湊は担い手としての使命を果たしてほしい。お前の父親が残した書物の文章を生かすんだ。……そうすれば、すべてが終わる。平和な世の中になる。きっと、辛いものになる。だが、あきらめずに頑張ってほしい。……それが、お前に伝えたい最後の言葉だ。そしてお前の父親の遺言だ」
 父さん……の……?
「何があっても、父親のために実現させてほしいんだ。頼むな」
「あのさ」
「なんだ」
「……そらは」
「……」
「古本少女は大丈夫なんだよな? 土台になるとか言ってるけど、それは僕を支えるためだけであって、父さんの遺言を現実にするだけである。それだけなんだよな?」
「何が言いたい」
「僕は!僕は……不安だよ。古本少女がこの世から消えてしまうんじゃないかって」
「分からない」
「え……?」
「私自身にも分からない。それは、結果は、実際にやってみないとわからないんだ」
「じゃあ……可能性はあるってことなのか?」
「分からないと言っているだろう!」
「……」
「今はこんなことを気にしているときではない!それでも私の担い手か!見損なったぞ!これから対戦のときを迎えるというのに……」
「……ごめん。でも!」
「いいから!……いいから、今から二時間以内には本体を推測する。それから追い詰めだ。そして対戦へ持ち込む。この過程を脳裏に刻んでおけ。足手まといにだけはなるなよ」
「うん」


 どんどんと話を進めている彼女がとても遠い存在に感じた。

———僕は……——

 「古本少女」の本当の存在意義をまだ知らなかった。何も。