コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 古本少女! ( No.35 )
- 日時: 2011/03/20 12:14
- 名前: 月読 愛 ◆o9WCM38pVQ (ID: OJbG5PHc)
それらの書物には、確かに父の字で文字の羅列が並べられていた。
「これっていつの?」
「二年前。あんたのお父様の病気が分かった頃くらいかしらね」
「え……お父さんが病気になったこと知ってたの?」
「……」
嘘だ……!
「だったらなんで解放してくれなかったんだよ!医師にだった、もう少し早ければ回復も希望があるって言われたのに……!」
「それは……」
「言い訳なんかいらないよ!」
「……」
僕は無性に腹がたった。古本少女は至って冷静に、僕に述べる。
「あのね、言わないでって言われたから隠してたけど、伝えなかったのは、あんたのお父様のご希望なのよ」
「え……そんなわけ!」
彼女の目は真剣だった。
「どうしてそんなこと……」
「お父様の病気が藍川湊に伝わると、この世界を操る担い手がいなくなってしまう。そうなった場合、代わりの者が必要。
でも、跡継ぎはその血筋をひくものに限定される。
つまり、そのときまだ中学生だったあんたには任せられず、あんたのためにお父様は頑張っていたのよ」
「僕のせいなんだ……お父さんが死んだの……」
「これで分かったでしょ? たかが古本管理人でも、人間をいくらでも蝕むことが可能なの。
……あんたのお父様も言っていたわ。湊のためにあの世へいけるなら本望だって」
「嘘だ!」
「ホントよ!……でも、あたしはこういうふうになることを予想していたから、だからそうやって書物に残させたのよ」
その後古本少女は感謝しなさい。と残して、地球の椅子がある部屋へと戻っていった。
そうなのか、僕がお父さんを……。そう思うと、凄く自分がいやになった。でも、僕がやらなきゃお父さんとも顔を合わせられない。
同時にそう思った。
だから、僕は立派な担い手になる。そう決めた。
正直、自分でも、展開をいまいち呑み込めていないが、お父さんが残してくれたこのマニュアルがある。
それだけで、心が緩んだきがした。
ガシャッと音がして、古本少女が戻ってきた。今度は僕の前に腰に手をあて仁王立ち。
「早く立ちなさいよ、ばーか」
といつもの不機嫌にもどる。
「あ、ごめん」
僕はたちあがり、彼女の表情を伺う。
相変わらず無表情だったけど、いいことしたわ、というようなオーラが出ているように感じた。
それから僕は必死にマニュアルを覚え、古本少女に指示することを覚えた。
ふうとさきほどの火星の上で休んでいると、冷たいコップを古本少女が頬に当ててきた。
「つめた!」
「ふん、飲みなさいよ、少し休憩させてあげる」
言葉は悪いが、気を使ってくれたのだろう。
「ありがとう」
素直に感謝の意を伝えた。
ふんと面白くなさそうに踵を返して足を止める。
そして僕に向き直る。
「……やれば出来んじゃない」
「え……」
小さくはあったけれど、確かに聞き取れた。
彼女なりに褒めてくれたらしい。
固まっている僕をしばらく見ていたが、また隣の部屋へと移動した。
その時、僕はなんとなく見てしまった。
彼女の表情はかすかに笑っていたように見えた。
勘違いかもしれないが、ここはうぬぼれて、そういうことにしておく。
僕も飲み物を終え、移動しようとしたと同時に、目の前でその扉が開かれる。
「どうしたの?」
「この顔をみてわからない?」
どうやら彼女は怒っているらしい。さっきの感動返せよ。とは言わず、
「怒ってる?」
「ええ」
どうして急に……僕が原因だろうけど、思い当たる節がない。
部屋を散らかしてきた?いや、ちゃんと本棚に戻した。
椅子を壊した?なわけはない。
さっきの飲み物?意味が分からない。
何だろう?
「僕、何かしたかな?」
「本」
「はい?」
「ふ・る・ほ・ん!」
耳を劈くがごとく、大きな声でいいやがった。
僕は咄嗟に耳を覆ってしまう。
「古本よ!さっき思い出したけど、あんたが一番最初にここに来たとき、浮いてた本持ってったでしょ!」
「ああ……」
そうか、そういえば寝た後、手に持ってたな。
「返さなかったっけ?」
「はぁ? 返されてたらこのこの空間に浮いてるでしょぉ?
今ないじゃない!」
「え?」
僕は辺りを見回す。
そのうちの一冊を手にとる。
「これだろ?」
「え?」
素っ頓狂な声を出し、彼女は渡された本を受け取る。
図星だったらしい。
「……」
沈黙がしばし続き、古本少女は僕の顔を一度見てから、さっと隣の部屋へと逃げた。
古本少女なのに自分が本見つけられなくてどうするんだよ。
他の捨ててあるたくさんの数は見つけられるくせによ……。